売上3.5倍に「すかいらーく」そば専門店の正体 埼玉県白岡市「ステーキガスト」からの業態転換

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なお、今回紹介した新しいブランドである八郎そばで店舗運営の効率化に関するユニークな取り組みを2つ行っているので少し紹介しておこう。

「そば湯バー」と「セルフ下げ膳」

「そば湯バー」。単にそば湯がいくらでも飲めるというだけだが、そば好きにはうれしいサービス(撮影:風間仁一郎)

1つが「そば湯バー」だ。店内中央にそば湯とお冷を置いたカウンターがあり、そばを注文していない人も含め自由に楽しむことができる。

店舗にとってはそば湯を運ばなくてよくなるので効率化できるし、店を特徴づけるサービスとしても面白い。

筆者もそのまま飲むほどのそば湯好きだが、専門店の場合、温かいそばだと持って来てもらえなかったり、もらえても量が少なかったりすることが多いので、これはありがたい。

ゆったりとしたつくりのテーブル席。ランチ時間にはウェイティングがかかるが、回転が早いので待たせる時間は短くて済むという(撮影:風間仁一郎)

もう1つは、「セルフ下げ膳」だ。客席と厨房の間に「下げ台」が設けられており、客自ら膳を下げられるようになっている。ランチ時間帯などに協力してくれる客も多いそうだ。テーブルを拭くだけで次の客を案内できるので、回転率も高まる。

アナログだが、客にとってもほんの一手間、店とのコミュニケーションを兼ねた、あたたかい人手不足対策になっていると感じた。大衆食堂風の店のコンセプトとずれがないのもよいのだろう。

以上、コロナをきっかけにしたすかいらーくの業態転換戦略を見てきた。2023年には30~40店の業態転換と50店の新規出店を計画している。

同グループではとくにコロナで影響を受けているロードサイド店舗が全店の70%となっており、今後もロードサイドを中心に業態転換を行っていくという。

2022年の売り上げは3037億500万円と、約3200店舗あった2019年の売り上げ(3753億9400万円)には届いていないものの、回復を見せてきている。

一消費者として考えても、メニューにしろ店舗にしろ、ずっと同じものよりも変化があったほうが消費欲をかき立てるものだ。その意味で、他業態を次々に展開するやり方は理にかなっている。

ただ、店ごとにコンセプトも違えばオペレーションもメニューも、接客も異なる。店舗としてサービスを軌道に乗せ、さらに客に受け入れられるまでには時間がかかるだろう。

続々と登場するすかいらーくの新しいブランドが、その地域ごとにどのようになじんでいくのか、今後ほかの例も含め興味深いところだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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