売上3.5倍に「すかいらーく」そば専門店の正体 埼玉県白岡市「ステーキガスト」からの業態転換
「さらに2010年ぐらいからはコト消費の高まりにより、外食に食事以外の『意味』を求めるお客様も増え、ニーズは『コスパ』『コト消費』に二極化している。こうした社会変化を受けて、むさしの森珈琲やハワイアン業態のLa Ohanaといった専門業態も開発してきた。コロナでこうした傾向はさらに強まっていると感じる」(久保木氏)
複数ブランドの展開には、店舗が増えても互いに競合にならずにすむメリットがある。さらにすかいらーくでは、国内10カ所の自社工場という強みを生かし、同じ食材を調理法を変えながら複数のブランドで扱うことで、スケールメリットによるコストダウン、効率化を行っているのだ。
柔軟な店舗展開が可能
すかいらーくの多業態戦略にはほかにも大きなメリットがある。
「業態転換」ができることだ。これによりニーズの変化や立地に合わせた、柔軟な店舗展開を可能とする。
実のところ、すかいらーくでも「業態転換」が頻繁に行われるようになったのは、現・代表取締役会長の谷真氏が社長に就任後、具体的には2008年頃からだそうだ。
とくにコロナではリモート、外食自粛等大きなニーズの変化が起きた。グループでも得意の業態転換戦略を駆使し、社会変化に対応してきたわけだ。とくに73店舗の業態転換を行った2021年では、業態転換による売り上げ向上率を61.7%と分析している。
中でも好調なのがカフェ業態の「むさしの森珈琲」だ。2015年に初めてオープンした業態だが、毎年、徐々に店舗数を伸ばしており、現在までに70店舗を展開。2023年3月、ガストから業態転換でオープンした小山本郷店(栃木県)は売り上げが前店比2.3倍になっている。
むさしの森珈琲の特徴は滞在時間の長さ。一般的には45分~1時間だが、同ブランドはその倍だ。普通なら滞在時間が長いと売り上げ自体は下がってしまうが、同ブランドは単価がガストの倍と高く、また客入りもよいため、回転率による売り上げを上回ることができる。ゆったりと過ごせる空間、時間を付加価値として、客に提供しているわけだ。
ちなみにすかいらーくでは店舗改装なども積極的に行っている。さらに配膳ロボット導入、キャッシュレス化などもいちはやく進め、「人手不足」という従来の大きな業界課題にも対策を講じてきている。
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