「オワハラ認定」は命取り、ブラック企業暴走の愚 SNSに書かれ、無理やり入社させてもすぐ辞める

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一方、オワハラ問題が近い将来なくなるという真逆の予測もありました。オワハラは、新卒一括採用で多くの企業が就活ルールに従って同時期に採用活動をすることに起因しており、今後この状況が大きく変わる可能性があります。

「すでに優秀な学生は外資系コンサルティングやITベンチャーなど(就活ルールに従わない企業)に流れており、就活ルールは有名無実化しつつあります。近い将来、就活ルールが撤廃されて、『そういえばオワハラってあったよね』となるように思います」(金融)

「日本でも遅かれ早かれジョブ型雇用が浸透します。すると、アメリカのように職場に欠員が出たら経験者を随時採用するのがメインになり、新卒一括採用は崩壊します。経験・スキルの乏しい学生を血眼になって奪い合うという不毛な争いは、早晩かなり下火になるでしょう」(エンジニアリング)

最後に、採用活動全般に意見・感想を求めたところ、多くの人事部門関係者が就活に臨む学生の皆さんに温かいエールを送っていました。

「私が就活をした1990年代半ばと比べると、情報が氾濫し、エントリーシートやインターンなどやるべきことが増えて、『今の学生は大変だなぁ』と感じます。ただ、大変ではありますが、就活は視野を広げ、未来の扉を開く素晴らしい機会です。いろんな会社を見て、いろんな人に会って、もちろんオワハラやセクハラには注意して、就活を楽しんでください」(素材)

「適当に就職し、合わなかったらさっさと転職すればいい、という考えもありますが、私は反対です。やはり最初に入った会社は、その後のキャリア形成に大きな影響を及ぼします。また、自分に合った会社を探す過程で、自分自身を見つめ直すことができます。自分としっかり向き合って活動し、納得できる会社を選んでください」(通信)

オワハラ問題で学生・マスコミからバッシングを浴び、すっかり悪役レスラーになってしまった人事部門。しかし、今回、多くの人事部門関係者が意気消沈せず、卑屈にならず、前向きに採用活動に取り組んでいることがわかりました。学生と企業の関係が改善し、学生にとっても企業にとっても納得いく出会いが増えることを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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