「KPIを妄信する人」にあえて教えたい負の側面 ツイッターの大量解雇が示す目標設定の無意味

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高いKPIを達成し、好成績を破格の扱いを受けられる一方、成績が振るわない場合の責任も大きい人事制度があるアメリカ企業では長らく、KPIによる管理を続ければ、自然と企業のパフォーマンスが改善すると考えられていました。

しかし実際は、KPIを設けられることに戸惑う従業員もいます。例えば、経理の支払い処理のように毎回できて当たり前の仕事をしっかりやっている人からすると「高い目標をセットしてください」と言われても、正直なところどうしていいか困惑します。あるいは、広報の場合、新聞などに掲載された記事数など、その人のコントロール外の結果を「数値目標を下回った」とシビアな業績評価をされてしまってはたまったものではありません。

それでも、「目標を数値化しなさい、しかもちょっと挑戦的な目標のほうがいい」と面談で紋切り型に言うようにマネジャーはトレーニングを受けています。

こうしたKPIセッティングが楽しいと思う従業員は1人もいないと思います。成績優秀な従業員にとってもこの作業は苦痛でしかないでしょう。にもかかわらず毎四半期目標設定、目標レビューの面接が設定されています。「制度上必要なのでやる」という以上の理由がなくとも、です。そして企業はKPIレビューに膨大な時間を費やしているのです。

会社全体をデータで管理し、優秀な社員で組織を固め、確実性の高い経営をする上で欠かせないKPI管理ですが、行きすぎると社員のモチベーション低下につながりかねません。

また、KPIさえ達成していればいいだろう、とばかりにKPI以外の業務に無関心になる、はては次年度のKPIを達成しやすいものに設定するために今年度もっと高い成果が出せたにもかかわらずパフォーマンスを抑える、いわゆる「三味線を弾く」(アメリカなのでバンジョーを弾く?でしょうか)社員まで現れるという問題も出てきています。

物議を醸したツイッターの大量解雇

この疑問に対し、さらに物議を醸しそうなことが最近ありました。

このコラムでも紹介した、イーロン・マスク氏によるツイッター買収と、その後に行われた従業員の大量解雇です。全従業員の半数以上の正社員、契約社員が解雇されたと言われますが、それらの従業員にも当然KPIか課せられていて、それを達成していた人も少なからずいたことは想像に難くありません。従業員からするとKPIは会社にとっての自分の必要性を証明する武器でもあるので、解雇は衝撃だったことでしょう。

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