「部下との会話が苦手」が治る管理職のやるべき事 心理的安全性を高める「コミュ力向上」のヒント

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ランチに誘って断られたら、誰だって多少はへこみます。人には「拒否されるのが怖い」という本能があるので、「断られて傷つくのが嫌だから、もうランチには誘えない」と怖気づく気持ちも理解できます。

僕だって、相手に話しかける状況やタイミングを間違えることがあります。ピョートルは心理的安全性の専門家だから、ピョートルの会話は100%素敵で失敗しないかというと、そんなことはありません。

でも、そういった恐れを抱いたまま相手と接しても、人間関係は悪化する一方です

緊張した面持ちでメンバーに声をかけたりランチに誘ったりしたら、相手も身構えます。

ヒント3.失敗してもすべては「実験」と考える

こう考えてみてはどうでしょうか。「すべては実験である」と。

「一緒にランチに行かない?」

「すみません、今日は例のプレゼンの日なので緊張していて、あまり食べる気がしないんです」

こんな返事があったら、「そっか、この人は緊張すると食べ物がのどを通らないから、そっとしておくのがいいんだな」とわかります。それを情報として自分のデータベースに取り込んでおきます。

「チョコレートあるんだけど、食べる?」

「ありがとうございます。でも、今はダイエット中なので、甘いものは食べないようにしてるんです」

これも相手に関する情報です。「そっか、今はダイエット中だから、この人への差し入れは甘いお菓子じゃないほうがいいんだな」。これらの情報を使って、次のアプローチを設計すれば、相手にとってより適切な選択ができるというわけです。

どんな状況で、どんなタイミングでならアプローチしやすいかは、人それぞれです。「こうすれば相手は話してくれる」という正解があるわけではありません。

すべては実験だと思って、いろんな方法を試してみましょう。試してみてはじめてわかることもあります。どんなシチュエーションなら相手が落ち着いて自己開示しやすいのかをいろいろ試してみて、それぞれの相手に合ったやり方を工夫していくことが大切です。

ピョートル・フェリクス・グジバチ プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者

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​Piotr Feliks Grzywacz

ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)など著書多数。

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