しかし配信からまもなく、『170センチない男は人権がない』発言は恐ろしい勢いで炎上していった。
「ツイッターへのリプライ、DMは追えないくらいの勢いで来ましたね。ほとんどは男性でした。殺害予告も大量に来ました。もともとエゴサ大好きマン(エゴサーチ・自分のことを検索すること)なんで、すべてのリプライに目を通しました。
そもそも、誹謗中傷には慣れてました。女性プロゲーマーというだけでたたかれることは多かったんです。それは自分でも仕方ないと思ってて。私よりゲームうまい男性って、当時もたくさんいたんですよ。私がプロになれたのは、女性だったからという部分が大きい。だから疎まれるのは当然ではあったんです。
だから散々『ブス』って言われてきました。顔とゲームの腕は関係ないけど、女性が顔を貶されたら傷つくことを本能的に知ってるんでしょうね。まず顔面をたたいてきます。それで大会で勝ったり、スポンサーを取ったりしたら『枕』だって言われました。枕で渡っていけるほど、甘い世界じゃないんですが。
そういう誹謗中傷には慣れてたはずなんですが。それにしても……それにしても、でした」
当時、生活が厳しかった人の憎しみが集中したと思う
来る日も来る日も誹謗中傷は続いた。
「結構いじっぱりで強がりなんで、周りには『全然生きるし!!』みたいに言ってましたけど、やっぱり落ち込んでましたね。夜寝れなかったですね。こんな寝られへんのか、っていうくらい寝れなくて。
まあ自分に対する誹謗中傷だけならよかったんですけど、実家に嫌がらせをされたのがいちばんこたえました。おばあちゃんがたい焼き屋をやっていたんですけど、評価サイトを荒らされて点数を下げられました。
家に電話かかってきて、父親か弟が取るとガチャって切るんですよ。母親とおばあちゃんが電話に出たときだけギャーギャー文句を言うんです。ムカつきました。
当時コロナ禍の中で、プロゲーマーが比較的うまくいってたんです。端的に言えば、稼げていた。逆に普通の生活してる人は生活が厳しかったですよね。女性プロゲーマーって楽して稼いでそうに見えるし、それが彼らのヘイトをためちゃったんだと思うんです。
『この女、楽して稼いでて、しかもこんな差別的な発言もしちゃうんだ! こいつ全力でたたいて、無職にしたる!』
という感じで私に集中して憎しみが向かったんだろうな、と今は思います。同じ内容の言葉でも今発言していたら、結果は変わっていたでしょうね。
私をたたいた多くの人たちは、悪いことをしている自覚はなかったと思います。正義の棒で私のことをたたいていたんでしょう。正義を振りかざすのは気持ちいいですからね。私はたたかれながら、人間はなんて愚かで、なんて気持ち悪いんだろうと思いました」
まもなく、CYCLOPS athlete gamingからは契約を解除された。
「プロゲーマーの活動5~6年目のときで。ああ、こんなんでいかれるんや……って。トカゲの尻尾切りになるやん、みたいな気持ちでした」
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