誹謗中傷は徐々に減っていったが、平穏になるには3カ月以上かかった。
そして平穏になる過程で、さらに嫌な事実を知ることにもなった。
「私が炎上するように仕掛けてたの、年上だけど後輩の女性プロゲーマーの人だったんですよ。もともと仲良かったし、ライバルみたいに言われて、プロレスみたいにずっとやってきてたんですけど。仲良しごっこのその裏で、がんばって2年くらい私を炎上させる活動をやっていたらしいです。その人が炎上のきっかけになった暴露系のツイッターアカウントにDMを送っていた証拠が出てきました。
それが原因なのかはわからないですが、彼女も契約は更新されず、私と一緒の無職仲間になってますけど(笑)。炎上中にはほかの女性プロゲーマーにも嫌な思いさせられて、すっかり女嫌いになりました」
たぬかなさんは炎上が収まるまで、ひたすら1日中ゲームをしていたという。
「『ELDEN RING』が発売されて間もない頃で、このゲームにはずいぶん救われました。あとは『VALORANT』っていう5対5で戦うFPSもやりましたね。
ゲームやってるときは嫌な気持ちを忘れられたんで、ずっとゲームをしてました」
バイトをしながら、少しずつ自信を取り戻していった
部屋に引きこもってゲームを続ける日々が半年近く続いた。季節はいつしか夏になっていた。
「半年くらい経って、やっとちょっとお金のこと考えようかなって思いました。重い腰を上げて、銭湯の掃除のバイトをはじめました」
不特定多数の人物から大量の殺害予告が届いた後だ。顔も素性も嫌というほどネット上にばらまかれた。
だから外に出るのが怖かった。
夜の闇に隠れるように、営業を終えた銭湯に向かい脱衣所の床にモップをかけた。1日で3000円くらいの稼ぎにしかならなかったが、少しずつ自信を取り戻した。
「普通の人って私の顔を覚えてないし、そもそも何があったかも覚えてないんだな、って知ることができて安心しました。それで
『まあ、大丈夫かな?』
と思って、夜やってる子に誘われてガールズバーで働くことになりました。人生初の水商売でした。早々に指名もついたし、仕事は楽しかったんですが、お客さんに直接ドリンクをねだるという行為が苦手でした。
お店の人にはよく
『今のお客さん、絶対もっと頼んでくれたのに、なんで飲まないの?』
とか怒られて……。正直、浅ましいなと思いました。客にダイレクトにお金をねだるって行為が私には向いてないなと……。
そんなとき、父親が危篤になってしまい、それをきっかけに辞めました」
たぬかなさんは地元に帰り、父親の介護をしながら日々を過ごした。
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