「激務でも合コン」ギャル男上司の目から鱗な教え サステナブルな働き方をするには「休む勇気」を
彼の下で働いていたある冬の日、「今日合コンやるけど、男性が足りないからお前もこい」と言われ、当日に人数あわせで参加したことがあった。
会場に行ってみるとミニスカートのサンタクロースのコスチュームを着た女性3人を囲むようにして同僚の男が10人以上参加しており、狭い居酒屋の個室をむさ苦しい熱気が満たしていた。
一人ひとりの自己紹介に対して他の9人が全員それぞれに関係のないコメントを入れるため、女性たちはほとんど喋る隙もなく、もはや合コンというよりもフリースタイルのラップバトルに近かった。男性陣の自己紹介が終わる頃には終電がなくなったが、私は合コンに全力でエネルギーを注ぎ楽しむ西村という男に畏怖すら感じていた。
西村はギャル男ではあったが、仕事に対して真摯な男だった。徹底的にアウトプットの品質を磨き上げるヤマウチとは違う形ではあったが、人たらしの才を遺憾無く発揮し、会話を通してクライアントの本音を引き出し、チームのリソース配分を無理なく冷静に差配した。
部下が倒れるまで使い潰してしまうマネージャーも一部存在した中で、西村の後輩社員からの支持は厚かった。西村は自分の直接の部下だけでなく、周囲の後輩社員の心身の状態に対しても常に気を配っていたからだ。徹夜での仕事が常態化していた会社において、後輩の健康にも目配りする管理職は彼を除いていなかった。
「悩み」を通して作業の品質が上がることはない
ある日、深夜まで働いている私は微妙に体に熱があることを感じていた。寒気がするにもかかわらず、体が熱い。意識がぼんやりしている。しかし、クライアントとの定期会議までに資料を完成させるためには、その日のうちになんとかデータの整理を終わらせておく必要があった。
西村は私の手が止まっているのを見抜き、「お前、体調悪いの? あとどれくらいで仕事終わるの?」と聞いてきた。少し微熱があり、今抱えている作業が終わり次第帰る旨を告げると、「もう帰れ、今。業務命令。あとは俺がやるよ。お前が1日いないくらいで潰れるようなチームじゃないよ。自惚れんな」と言い、西村は半ば強引に私の端末を閉じ、困惑する私を事務所から追い出したのだ。
翌日の会議で、私が資料を完成させることができなかったアジェンダの部分はすべて西村が口頭で淡々と説明を終わらせた。ありがたいと感じる一方で、体調管理ができなかった自分自身が情けなく、そして管理職である人間であれば口頭で説明できる程度の内容に、これほどの時間を費やして準備をしなければならない自分の非効率さを恥じた。
いつからか私は長時間働くことが当たり前になりすぎていて、時間をかけて悩みながら働くことで仕事の品質が上がると勘違いをするようになっていたのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら