小名浜港の機能停止と原発の風評被害に悩むいわき市、物資不足解消進むが介護施設の人不足続く【震災関連速報】
4月1日未明、福島県いわき市につながる常磐自動車道の関本パーキングエリア(PA、茨城県北茨城市)には、荷積みしたトラックが所狭しと駐車していた。関本PAはいわき市の工業地帯への降り口、いわき勿来インターチェンジ(IC)の直前3キロメートルにある。
「工場がようやく稼動するということで原料を川崎から運んできました」
一人のトラック運転手は荷物をチェックしながら、こう説明してくれた。もう一人の運転手も「工業用燃料」だった。
「とにかく遅れることなく工場に届けたかった。途中で渋滞などに遭わないように、深夜走り続けた。ようやく勿来の近くまで来たので仮眠していた」
運転席で歯を磨きながら、こう答えてくれた彼は北九州から走り続けていた。原発近くで心配ではないかとたずねると、「そんなことは考えていない。届けるのが仕事だから」と、ニコッと笑い返した。
市内の北方の一部が東京電力福島第一原子力発電所の半径30キロメートル圏に入ることから、いわき市は風評被害を受け続けている。とくに、原発で水素爆発が発生して以後、市内への物資供給が極端に細り、市内では、ガソリン、飲料水、食品など生活必需品の不足が著しかった。
その事態は3月末ごろから次第に改善してきた。すでに市内の大手スーパーが全面開店となったほか、ガソリン供給も好転している。ガソリンスタンドの前からガソリンを求める自動車の行列が1キロメートル以上続いた光景はすでにみられない。列ができていても数十メートルになっている。
平消防署のなかに設置された災害対策本部で、いわき市役所の下山田松人・広報公聴課長に話を聞いた。「物資不足は大幅に改善した」と、ほっとした表情で語る一方では、「しかし、風評問題は続いている」と厳しい情勢を説明してくれた。
「いわき市はハウス栽培の冬モノのトマトでは全国トップクラスの生産だが買ってもらえなくなってしまった。農家の打撃は深刻です」
いわき市は農業、漁業という第一次産業と同時に、製造業の生産拠点も多い。冒頭で紹介したように、その生産活動再開のための原材料は陸路が入るようになった。