欧州で露呈、鉄道車両「メーカー主導開発」の限界 納期遅れや問題多発、鉄道会社と共同に回帰?
ところが昨今は、メーカーの合併・集約が進んだことで各国の地元企業が姿を消し、一部の大メーカーだけが生き残る形となった。それに合わせるように、鉄道会社とメーカーの関係性は薄れ、かつてのように共同開発を行う例は減ってきた。そのため、メーカーは自社で開発したシステムを鉄道会社側へ売り込むという形を採らざるをえなくなる。もちろん、開発にあたって鉄道会社から資金提供があるわけではなく、走行試験も車両が完成してから試運転を行って熟成していくしかなくなる。
FV-Dostoの例のみならず、昨今は欧州系大メーカーであっても納期に間に合わず、鉄道会社側へ「お詫び」をするケースが後を絶たない。これは先行試作車が完成してテストを始めたものの、思うような成果を上げられなかったり不具合が発生したりといった問題が重なっていることも原因の一端となっている。
鉄道会社と共同開発の潮流が復活
このような状況もあってか、最近ではメーカー主導の開発から一転し、再び鉄道会社とメーカーが手を組んで開発を進める動きが出てきている。
アルストムはフランス国鉄(SNCF)とイノベーション・パートナーシップを結び、次世代型TGVとなるアヴェリア・ホライズンの開発に取り組んでいる(2月18日付記事「ついに試走開始、フランス『新型TGV』成功する条件」)。
またドイツ鉄道(DB)は2022年11月、来る2030年代以降の高速鉄道車両の設計を見据え、シーメンスとアルストムの両メーカーと共同で次世代型車両コンセプトの開発に取り組むと述べた。次世代型車両の開発に関する最初の入札に続くもので、DB自身はこれまでの高速列車運用のノウハウを提供する。コンセプトが確立された後、2023年後半には新型車両の開発、製造、認証のための入札が行われるが、これには前述の2メーカー以外へも開放される予定となっている。新型車両は2030年代初頭には営業投入予定で、1990年代に製造されたICE3を置き換える予定となっている。
とくに難しい技術を必要とせず、汎用性の高い近郊用車両については、よほどの設計ミスがない限り、メーカー主導の車両開発でも問題はないだろう。だが、高度な技術力と多くのノウハウが要求される高速列車の開発には、今後は再び鉄道会社が深く関与していく可能性が高いと考えられる。
現在、
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら