とはいえ、アメリカ政治は依然として大きな問題を抱えている。世界は、米中関係のみですべてが規定されるわけではない。「グローバルサウス」の諸国とよりいっそう連携していくこともまた、より多極的な世界においては重要となるであろうし、それによってより幅広い連携が可能となる。G7以外では、地域的な安全保障課題に対応するためにも、オーストラリアや韓国といった価値を共有する諸国との戦略的な協力が必要であり、またインドのような大国との協力はこの地域におけるアメリカのリーダーシップを強化することになるだろう。
同盟諸国との関係改善へ向けて
同盟諸国との関係を修復して強化するためにも、同盟国の産業を懲罰することになるインフレ抑制法のようなアメリカ国内法を再考する必要がある。また、EU域内の自動車産業に差別的扱いを避けるためにも、アメリカのEV税控除法を修正することを目指すべきだ。
G7はさらに、ウクライナにおいていかなる「出口戦略」を見いだすか、共通の認識を目指すべきだ。ヨーロッパは、どのような帰結となるとも、その地域における安全保障にとってアメリカよりも自らのほうに対してより大きな影響が及ぶことを理解しなければならず、そのような想定をもとに将来の防衛政策を立案していくことが必要だ。
国際社会での信頼の低下というリスクに直面する中、アメリカは同盟国の日本の力を借りることによって、大きな利益が得られるはずだ。日本はこれまで、ルールに従う国から、ルールを形成する国へとその役割を転換させつつある。
たとえば、日本はインドやオーストラリアを包摂して「クアッド」の枠組みを形成し、さらにアメリカ不在の中でもCPTPPを実現させ、この地域での自由貿易を促進してきた。さらには7.5億ドル規模のインフラ投資と経済支援を基礎とした、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」への関与をさらに拡大することにした。
オバマ大統領がG20で重要なイシューについて、開かれた対話を行う必要を論じたことは適切なことであったが、今日では地政学的な課題に向き合ううえでG7もまた有意義なフォーラムとなっている。アメリカにとって、ロシアと中国からの挑戦に対し、適切な対応が可能であることを示すリーダーである姿を回復しなければならない。その意味でも、アメリカがG7の意義を再発見することが、重要な意味を持っているのであろう。
(ディクソン藤田茉里奈/API研究員補)
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