「ペンギン池落下」日テレ謝罪がスッキリしない訳 危機対応より感情を優先させた謝罪は失敗する

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KDDIの高橋社長の会見は、数少ない危機対応のお手本のような成功会見でした。会見では、担当者が具体的な事故説明をするのかと思いきや、社長自らつかつかとスクリーンの前に出てきて、機器トラブルの状況と原因推定、さらには復旧見通しの見込み(会見時ではまだ明確な復旧時期は提示できないが、見通しを伝えられそうな見込みの説明があった)を説明したのでした。

土下座や涙の謝罪といったパフォーマンスではなく、技術畑出身の高橋社長による専門的知識に裏付けられた説得力ある説明と、技術的に難しい部分を巧みにわかりやすく解説する抜群のコミュニケーションによって、憎悪や敵愾心に満ち満ちた周囲をどんどん変えていきました。

当然のことながら、その際に「当社の責任ではなく」や「外注先が」などのありがちな言い訳はありません。そのような他責の説明は、仮に真実であっても、この批判の嵐に対抗などできるはずがありません。KDDIがこの危機を成功裏に乗り越えられたのは、社長による正確で誠実な会見の成果だと、私は考えます。

これこそが言い訳と謝罪の最も明確な関係といえるのではないでしょうか。

原因説明よりも「欲しい答え」

通信障害で困っている人たちに、事故原因の説明という体の言い訳ではなく、「今何が起きていて」「この先どのような展開があり」「いつごろにはどうなる・どうなりそうなのか」という回答を、わかりやすく伝えたのです。

もちろん事故原因に意味がないということではありません。しかし今現在燃え上がっている事柄において、その原因よりも自分たちの置かれている困難を何とかしてほしい、どうすればいいのかという回答こそ、「欲しい答え」でしょう。

当事者・責任者の言い訳はこうした渇望に、何も回答していないのです。

ということは、トラブルで被害や迷惑を被っている人たちへ、まず第一に届けなければならないメッセージは、十分な謝意と今後の対応についての説明に尽きるでしょう。言い訳も土下座も、こうした危機の解消にはまったく役に立たないから不要なのです。

わかりやすく状況を説明し、さらには回復時期の見通しや、まだそれすらつかめないようであれば途中経過や見込みでかまいません。適正な情報開示の実行に全力を注いだほうがいいでしょう。

また、これはKDDIの事故のように具体的な損害が出て、その復旧や補償が求められるケースに限りません。「スッキリ」での不祥事のような意思疎通の齟齬から生じたトラブルでも同様です。日々の業務で発生するトラブルについても、言い訳や自己弁護よりも、できるだけ冷静な事態把握と適正な情報開示の実現に注力していただきたいと思います。

増沢 隆太 東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家

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ますざわ りゅうた / Ryuta Masuzawa

東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。コミュニケーションの専門家として企業研修や大学講義を行う中、危機管理コミュニケーションの一環で解説した「謝罪」が注目され、「謝罪のプロ」として数々のメディアから取材を受ける。コミュニケーションとキャリアデザインのWメジャーが専門。ハラスメント対策、就活、再就職支援など、あらゆる人事課題で、上場企業、巨大官庁から個店サービス業まで担当。理系学生キャリア指導の第一人者として、理系マイナビ他Webコンテンツも多数執筆する。著書に『謝罪の作法』(ディスカヴァー携書)、『戦略思考で鍛える「コミュ力」』(祥伝社新書)など。

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