「ペンギン池落下」日テレ謝罪がスッキリしない訳 危機対応より感情を優先させた謝罪は失敗する

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この手のリアクション芸を生み出したのは、ダチョウ倶楽部さんやたけし軍団さんなどのパイオニア芸人さんたちです。

かつては、ただ裸になったり尻を出すだけの芸だと批判されていたのですが、時代の流れとともに「お約束」という言葉が認知され、あのような集団リアクションには実は台本があり、何よりそのタイミングや空気感によって、素人がただ裸になったりするのとはまったく違う構成であることが徐々に浸透していったといえます。

精密な作りや構造によって成り立つリアクション芸に対し、今回の加藤さんのフリはあまりに乱暴かつ雑だったと私は思います。コンプライアンスに厳しい現在のテレビ番組において、動物園の中で行うのはまずいという判断がつかないこと、何よりそれを面白いとする感覚は、お笑いのセンスも問われてしまいます。この事件が炎上している理由は、このセンスについて疑問を感じる人が多かったためだといえるでしょう。

言い訳を一切せずに謝罪した「成功例」

2022年7月に発生したKDDIの通信障害の例があります。このときはユーザー3千万人以上に影響を与えただけでなく、社会のあらゆるインフラ、医療にまで影響した大事故でした。

KDDIにはごうごうたる非難が集中しましたが、事故発生翌日に開かれた、同社の高橋誠社長ら経営陣による緊急会見が流れを変えました。こうした事故時に経営陣が揃って登場し、一斉に頭を下げるシーンで記者団のカメラフラッシュが集中するのは、もはやこれまたお約束ともいえるお決まりシーンです。

そしてそのほとんどは、社長による「この度世間の皆様にたいへんなご迷惑、ご心配をおかけし……」というテンプレ謝罪トークが行われるのも、企業謝罪あるあるです。「テンプレ謝罪」には、どこかの謝罪専門家やPR会社の入れ知恵謝罪会見だという批判も起こってしまいます。

ちなみに私が代表を務めるコンサルタント会社にも、不祥事を起こしたので何とか謝罪をしてほしいという、謝罪代行のご依頼をいただくことがあるのですが、そのような代行は一切していません。お粗末なテンプレ謝罪など絶対に薦めません。

私が対応するのは、BCP視点や高度コミュニケーション技術という考え方に興味を持っていただいた企業や公的組織に対する、交渉やコミュニケーションの戦略、そのトレーニングです。

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