新型に「カングーらしさ」は残っているのか? 試乗でわかった「ルノーの流儀」の一貫性

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写真で見ただけでは直線基調のシンプルなフォルムに見えたスタイリングも、実際はサイドやリアの面に抑揚があり、乗用車っぽさが強まっていた。ゆえに、ボディ同色バンパーとフルホイールキャップを組み合わせたインテンスのほうが、このスタイリングには似合っていると感じた。

インテリアは、「ルーテシア」や「キャプチャー」に近い雰囲気だ。つまり、この部分も乗用車らしさが強まった。シートの座り心地もこの両車に似ていて、先代と比べると硬くなったが、座面の厚みがしっかりとあって快適である点も、ルーテシアやキャプチャーと共通している。

前席の頭上にある、なにかと便利なトレイは健在。一方、後席頭上にあった3分割のストレージボックスはなくなった。インポーターに尋ねると、フランスではユーザーの多くがクルマを手放すときまで一度も開けなかったので、「なくてもいい」という判断になったそうだ。フランスらしい合理主義である。

軽快なガソリンか、重厚なディーゼルか

プラットフォームは、ルノー・日産・三菱アライアンスのC/Dセグメント用を使いつつ、各部を新設計。ステアリングのギア比は先代よりクイックにし、サスペンションは、ストロークをそのままにロールを抑えたと説明していた。

ドライブした印象はそのとおりで、身のこなしは俊敏になり、ロールは抑えられていて、EDCをマニュアルシフトして積極的に走ろうという気持ちになったほどだ。ほっこり癒やされるような乗り味は薄れた一方で、見た目からは想像できないハイレベルなハンドリングは、さらにレベルアップしていた。

1.3リッターガソリンターボエンジン(筆者撮影)

エンジンは、ガソリンが1.2リッターターボから1.3リッターターボになり、ディーゼルともども組み合わせられるEDCは、6速から7速になった。車両重量はガソリンEDC同士の比較で先代より100kgほど増えているが、どちらも力不足は感じなかった。

力に余裕があるのは最大トルクで上回るディーゼルのほうで、ガソリンは回して加速する印象だ。車両重量はガソリンのほうが90kg軽いため、ステアリングは軽く乗り心地はややマイルド、身のこなしはさらに軽快だ。重厚な走りっぷりのディーゼルより、先代に近いフィーリングだ。

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都市部で使う人や走りを楽しみしたい人はガソリン、ロングランを主な目的とする人は燃費面でもアドバンテージがあるディーゼルがいいだろう。

日本ではこれまで、フレンドリーなデザインと乗り心地の良さで人気をあと押ししていたカングーだが、新型は安全性能や運動性能を引き上げることに注力している印象を受けた。仕事にも遊びにもガシガシ使い倒し、走り込むような人には、新型のほうが向いていそうである。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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