かくして、VCがこのステージで評価することの大半は、創業者があれこれ求めてさまようアイデアの迷路なのだ。
創業者は自らの意見を伝えるために、どんな知見と市場データを取り入れて、現在の製品のアイデアにたどり着いたのか?
VCが好む創業者の像とは
プロダクト・マーケット・フィットを見定めるうちに何度も変更を繰り返すのだとすれば、創業者の成功を予測するものは、実際の製品のアイデアではなく、あれこれと求めて迷うアイデアのプロセスということになる。
その証拠に、確固とした意見を持ちながらそれにあまりこだわらない創業者をVCは好む、とよく言われる。つまり、説得力のある市場データを取り入れ、そのデータを用いて製品を発展させる能力があるという意味だ。
確固たる信念を抱き、その過程でよく吟味すること。けれども、現実世界のフィードバックにもとづいて、(VCの婉曲表現を引き合いに出せば)「ピボット(方向転換)」できるということだ。
製品評価でもうひとつ重視するのは、その製品の画期的な性質である。
大企業は組織が硬直化しているので、新製品の導入が難しい。消費者にも、やはり変化を受け入れるのは難しいという習性がある。
ドイツの科学者で、現代量子物理学の祖であるマックス・プランクの言葉が、これをもっと雄弁に物語る。
「科学は葬式のたびに進歩していく」。
要するに、一般の人々に新しいテクノロジーを採用してもらうのは至難の業ということだ。
したがって、現状にわずかな改良を加えただけならば、新製品は成功しないだろう。
企業と消費者が採用せずにはいられないようにするには、現在の最高クラスの製品よりも10倍優れているか、10倍安価である必要がある(もちろん、この「10倍」は単にヒューリスティクスだが、要は、わずかな違いでは人を動かせないということだ)。
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