本場米国のプロが教える、VCが使う3つの投資基準 VCがパワポのピッチだけで投資判断する理由

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ここでは、「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ。

「企業」とは、あるアイデアを持った個人のごく小さな集合ーー創業者1人か2人だけのこともあるーーにほかならないので、VCの評価はチームを重視する傾向がある。

競合の見極めがVC投資のカギ

とりわけ、彼らがアイデアを実行するときの効率性について手がかりを得ようとして、多くのVCは創業者の背景を深く探る。

この場合の考え方の基本として、アイデアは独占的なものではないということが前提となる。要するに、対抗馬がいることを仮定する。

それが優れたアイデアだと判明した場合、当然、このアイデアを追求する創業者や、それを実現するために作られる企業がたくさんあるだろうと考えるのだ。

だから、VCとして何より重要になるのは、このアイデアを形にしようと現れるその他無数のチームのなかで、どうしてこのチームを支援したいのか、ということだ。

このチームに投資する機会費用は計り知れない。つまり、ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ。

クライナー・パーキンス社のパートナーである、ベンチャー・キャピタリストのジョン・ドーアは、VCの基本ルールは「競合なくして利益なし」と言ったとされるが、現代のVCにとって、競合の見きわめが大きな影響を与えるのは事実である。

VC投資の機会費用とは

ベンチャー・キャピタリストは事実上、同じチャンスを追求する企業には投資できない。もっとも、競合相手をどう見きわめるかは、見る人によって当然異なる。

なぜかと言えば、VCが企業への投資を決定するということは、その領域における事実上の勝者として、その企業を実質的に承認することだからである。

たとえば、フレンドスターがソーシャルネットワーキング市場を独占しそうだと思っていたら、フェイスブックではなくフレンドスターに投資するだろう。

VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない。

これを踏まえると、正しい分類を選択しても(つまり、ある特定の領域に大企業ができると的確に予想しても)、企業を間違える(つまり、支援する馬を間違える)ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる。

たとえば、2000年代初めに、ソーシャルネットワーキングが広がると気づいていたかもしれないが、フェイスブックではなくフレンドスターに投資をした。

または1990年代後半に、検索がビッグビジネスになると気づいていたのに、グーグルではなくアルタリターン(AltaReturn)への投資を選んだ、という具合にだ。

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