近未来「コーヒーが飲めなくなる」が誇張でない訳 コーヒーの「2050年問題」の知られざる中身

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「昔ほど素晴らしい酸味を持ったコーヒーが少なくなってきている」

そんな感想をよく聞きます。良質な酸味を含め、複雑な味わいや香味は、寒暖差がある土地でコーヒーノキが適度なストレスを受けながらじっくりと育っていくことで生まれると考えられています。ここ2~3年ではあまり差は感じなくても、10年前と比べると味わいに多少なりとも変化があると言う人が一定数います。

生産者たちからは「昔はよい豆が採れていた区画で、採れなくなってきている」という話も聞きます。地球温暖化の影響は実際に起きているのでしょうか。最近は生産処理方法など発酵分野において技術革新が進んでいますが、裏を返せば「テロワール(地域特性)だけでは品質を担保することが難しくなってきている」という一面もあるのかもしれません。

これまでと同じ品種を同じように手をかけて栽培しても、収量が減り、品質も下がり、その結果として買い取り価格が下降すれば、栽培から撤退する生産者は増えることでしょう。

生産者が減れば、当然ながら世界に流通するコーヒーも減ります。「コーヒーが飲めなくなる」というのも、あながち「誇大表現」とは言い切れないかもしれません。

コーヒーをなくさない努力

とはいえ、私は正直さほど悲観的にはなっていません。コーヒーの種にはカネフォラ種、リベリカ種、また交配品種も存在し、ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)に代表される国際機関が、気候変動に耐えうる良質な品種の開発を積極的に行っています。

歴史を振り返れば、「人類はなんとかしてコーヒーを飲むはずだ」という確信もあります。歴史上、政策や国際情勢によりコーヒー不足に陥った国では、それを不満に思う人たちが必ずコーヒーを取り戻してきました。フランス史上もっとも有名な英雄ナポレオンの失脚に少なからず影響を与えたのも「大陸封鎖令」の影響で国民にコーヒーを飲めない不満があったからだと言われているくらいです。

ちなみに「大陸封鎖令」でヨーロッパをコーヒー不足にしたナポレオンですが、本人はコーヒーが大好きだったと言われています。失脚してセントヘレナ島に幽閉され、体調が悪化してコーヒーを止められてからも、どうしてもコーヒーが飲みたいと言って周囲に懇願していたといいます。

当時、コーヒー不足に陥ったヨーロッパでは、さかんに代用コーヒーが作られました。しかし、カフェインを含む飲料を簡単に作ることはできません。そんなわけでナポレオン失脚後、ヨーロッパにコーヒーが戻ってきて大ブームになっています。

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