紙の本を読まないと、人は確実にバカになる

鈴木幸一×松本大「ネットの未来」を語る

アメリカでは、生活の安全を守るために、盗聴を8割が賛成している。中国では、もし盗聴がなければ、習近平だって暗殺されかねないと思っている。

個人の動きをすべて把握できる社会は、すぐそこに来ています。ヨーロッパで今、実験しているのは、例えば大(おおき)ちゃんが車を運転していると、どこを走っているか、すべて把握できるようになる仕組みです。それによって、あらゆる車の走行距離が把握され、インフラ利用税として課税しようという構想です。これは猛反対を受けているけれども、テロの犯人を迅速に逮捕することに貢献することから、多くの人からの支持もある。

ビッグデータは大きなメリットをもたらす

つまり、怖さを前提にしながらも、何をしますかね、ということが今後の課題でしょう。日本は、過去、十何年やってきて、まだ国が気づかない。例えば医療情報なんて典型です。医療の情報は、アメリカでは個人のものです。しかし、日本では病院のものになっている。そこを変えるだけで、つまり個人データをパブリックなものとして、そのビッグデータをもとにして新薬開発、予防、副作用のチェックなどを行えば大きなメリットがあるのに、いまだにできない。

松本 大(まつもと おおき)●1963年埼玉県生まれ。マネックス証券社長CEO。1987年に東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経てゴールドマン・サックスに勤務。1994年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1998年に退社し、マネックス証券を設立した

松本:日本はね、本当にパブリックということができていない。これは根本的な違いですね。アメリカは、個人の取引データはパブリックのものという考えかた。だから不動産売買から物の売買から、あらゆる取引記録がトラッキングできます。取引データっていうのは、もうパブリック・インフォメーションであって個人情報じゃない。

──たしかに不動産の賃貸契約データや裁判の記録をインターネットで見られますね。ダウンロードをする際にほんの少しだけ費用は掛かりますが、これは荒らしを防ぐための仕組みのようです。

松本:裁判とか不動産だけじゃない。普通の買い物の記録だって、もう、パブリックのものです。その点で、社会の成り立ちが違う。ところが、日本はいまだに電話の代わりにインターネットを使ってビジネスをする、という程度のものにとどまっている。そういう程度のアプリケーション・レイヤーはやるんだけど、それよりも深いものができない。

認識の隔たりというものは、ビットコインについても感じます。アメリカではビットコインの関連会社に巨大なお金が出資されている。日本の感覚から言うと、「何、これ?」ですよね。

鈴木:今は、インダストリーそのものがハイパーになっている、ということですよ。インターネットという道具は、世界を蜃気楼にするような仕組みを持っている気がする。最終的にテクノロジーという覆いをかけて、誰もがわからないうちに社会を変えちゃうような仕組みなんじゃないかと思うんですよ。それを拒否してもしょうがないって僕は思っている。受け入れようじゃないか、と。でも大ちゃんは、ちょっと違うんだよね。

松本:僕はプラグマティック、つまり現実主義者ですね。ビジネスの人なので、鈴木さんのようにはなれないんですよね。

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