苛烈な金利競争でメガバンクに迫る危機 生保や証券にも迫られるビジネスモデル転換
メガバンクや地方銀行などは通常、TIBOR(東京銀行間取引金利)などの基準金利に、企業の信用力に応じてスプレッド(上乗せ金利。信用力の高い企業ほど低い)を加えて融資する。しかし、貸し出し先に困った地銀が東京に攻め込み、金利で勝負をかけてきている。結果、スプレッドが潰れ、メガバンクの提示する金利を地銀が下回るケースが頻発している。
地銀による攻勢は、東京の信用金庫にも大きな影響を及ぼしている。「年商数億円ぐらいの少し大きめの中小企業に、大口定期預金かと思うような低い貸出金利を提示して、地銀がとりにきている。ウチも泣く泣く、同じぐらい低い貸出金利に下げて、取引を継続してもらっている」と東京北部の信金幹部は嘆く。
4月9日、全国銀行協会は3月末の116行計の貸出金を発表した。457兆7540億円。前年同月比で2.4%増だ。これで43カ月連続で貸出残高は前年同月を上回った。だが、「金利競争が和らぐには、2~3%程度の増加幅ではとうてい足りない。貸出金利はしばらくの間、上向くことはないだろう」(別のメガバンクの法人融資担当幹部)。2015年度も貸出金利をめぐる苛烈な競争は続き、銀行は苦戦を強いられることになるだろう。
生保や証券会社にも大きな打撃
金利低下は、生命保険会社の経営も脅かす。保険契約者に約束した予定利率に見合う運用利回りが確保しにくくなっているためだ。昨年1月、住友生命が一時払い養老保険や個人年金保険の販売を取りやめたことを皮切りに、昨年10月には第一生命とソニー生命が一時払い養老で、明治安田が一時払い個人年金で追随した。今年に入ってからは、日本生命が一時払い終身保険の予定利率を引き下げ、保険料を値上げした。
証券会社もビジネスモデルの転換を迫られている。3年ほど前、金融庁から投資信託の回転売買について「待った」をかけられた。回転売買とは、「前月に販売した商品を顧客に売却させ、今月新規に売り出す新商品に乗り換えさせて、手数料を稼ぐ」と長年批判の強かった証券セールスの手法である。
回転売買をやめたという中堅証券もあるが、仕組み債や外債といった「値ザヤ」(証券会社の仕入れ値と顧客への売値との間の差)の大きい商品の販売で収益を確保しているところも少なくない。これでは手数料荒稼ぎの回転売買が、値ザヤ取りビジネスに取って代わっただけだ。証券会社はより抜本的な変化を求められている。
銀行、生保、証券。金融の主力3業態が、閉塞状況から脱しようと、新たなビジネスモデル確立に向けて七転八倒している。
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