2024年に「アメリカで内戦」が発生しかねない理由 「格下げ」された人々の癒やしがたい怨嗟や憎悪

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次期大統領選への出馬を表明しているトランプ氏の動向次第では、2度目の「南北戦争」を招いてしまうのか(写真:ミリアム・アラルコン・アビラ/Bloomberg)
アメリカ、そして世界に衝撃を与えた「Qアノン」扇動による2021年1月に発生した前代未聞の連邦議会襲撃事件。次期大統領選への出馬を表明しているトランプ氏の動向次第では、再びこのような事態を招くのか。さらには2度目の「南北戦争」を招いてしまうのか。
世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が読み解き、警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)を翻訳した井坂康志氏が同書のポイントを紹介する。

それはある日突然やってくる

「川一つで仕切られる滑稽な正義よ。ピレネー山脈のこちら側での真理が、あちら側では誤謬である」(パスカル『パンセ』)

『アメリカは内戦に向かうのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

内戦はある時突然火を噴く。少なくともそのように見える。しかし、内戦研究の蓄積を用いれば、その兆候を事前に知ることは可能である。

なぜなら、内戦にはパターンがあるからだ。誰もが目にしているのに、誰も認識していない「急所」はどこにあるのか。

バーバラ・ウォルターは、名医がいくつかのポイントから病状全体を割り出すように、世界で日々起こっている事象から、戦慄すべきアメリカ内戦危機への診断を行っています。

この本には尋常ならざるリアリティがあります。その記述の多くは、一人称で書かれています。通常の学者の作法からすれば、きわめて「野心的」です。本書の魅力として最初に指摘すべき点かもしれません。

『ニューヨーク・タイムズ』等の主要メディアでの賞を多数受賞していることや、Amazonの原書に1200という驚異的な数のコメントが寄せられ、高評価を得ていることは、きわめて広汎にそのリアリティが共有された証しとも言えるでしょう。

そのためのアプローチとして、多くの専門研究者が長年にわたって蓄積してきた叡智の粋を垣間見ることができます。それは読み手に巨人の肩の上から現代世界を俯瞰する感覚を与えてくれます。

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