凋落「いきなり!ステーキ」創業者長男が語る再建 客数回復のための「議論は尽くした」と自信
――肉マイレージのランクアップ条件も、批判の多かった「食事回数」から、かつてのブームを支えた「食べた肉の累積グラム数」に変更しました。こうした特典改定も含め、どのように客数を戻していきますか。
自分たちが「よいと思う売り方」で「売りたいもの」を売るのではなく、「お客様が何を望んでいるか」を第1に考えていく。現在は郊外の店舗も都心店同様、カウンターは高さがあり、(ドレッシングやソースが並べられている)カスタムセットがお客様の前にそびえ立っている。
お一人様が多い都心では効果的だが、地方ではお客様同士の会話を阻害し、居心地を損ねてしまっている。ロードサイドの店舗は、家族やカップルでも心地よく利用できる環境に改装していくつもりだ。
足元で実験中のモバイルオーダーなどのデジタル化も、都内の店舗中心に導入を検討している。しかし都内でもサラリーマンの多いビルインか、家族客も多いフードコートかでお客様のニーズは異なる。それぞれ立地ごとに体験価値を最大化できるよう、店舗投資を進めていくつもりだ。
――失敗が続いている新業態や海外展開など、既存事業以外での成長戦略についてはどのように考えていますか。
新業態に関しても、前社長は「いい物は誰にでも、どこにあろうと売れる」という考え方だった。結果、ターゲットが不明確で立地分析もできていなかった空揚げ、カレー業態はすぐ撤退となった。メインターゲットをある程度絞り込むことで、物件選定や店舗開発、販促も効率的になる。今期から着手し、来期以降出店したい。
フランチャイズによる海外展開も大きなトピックだ。昨年末には「いきなり!ステーキ」がフィリピンに進出した。当社には過去300店以上にまで海外店舗を増やしたペッパーランチでのノウハウがある。
それを生かし、アジアを中心に「いきなり!ステーキ」の海外展開を積極的に進めていきたい。世界的にもコロナ禍が一段落した今、いろいろな国の企業からお声がけいただいている。今2023年12月期中にもすでに展開している国(台湾、フィリピン)で複数追加出店する予定だ。
前期までのようにはならない
――店舗改装に肉マイレージなどの特典強化、さらにやデジタル化や新業態など、投資もこれからは増えていきます。一方で前2022年12月期も15億円強の営業赤字と、財務は不健全な状況が続いています。
今期は黒字化を計画している。今までは店舗数が安定していなかったこともあり、肉類の長期買い付けが難しく、多くを市場の実勢価格で調達せざるをえなかった。また価格が高騰している部位でも、こだわって使用してきたため、原価率は非常に厳しかった。
店舗閉鎖も一服した今期から長期調達を本格化し、同じステーキでも価格が安定している商材を、お客様の反応をテストしながら戦略的に取り入れたい。また昨年12月の価格改定に加え、本社面積の削減、度重なる減損損失の計上で、収益性はかなり上がってきている。投資資金に関しても、昨年12月にリリースした通り、追加のMSワラントで調達中だ。
――今回は従来の調達と比べ、資金使途の予定は財務健全化より事業投資に重きを置いています。しかし直近のMSワラントによる資金調達でも成長投資を語りながら、調達資金の大部分を借入返済に充当しました。今回も同じ轍を踏むことにはなりませんか。
そうならないと断言できる。2020年からペッパーランチの売却や固定費の見直しで、金融機関への返済は進んできた。EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)も改善している。
確かに直近は想定よりもコロナが長引き、撤退も年々増える中、会社の継続のために調達資金の多くを返済に回してきたことは事実だ。だが返済も進み、コロナの影響も小さくなるこの2023年というタイミングで、なんとしても業績回復、お客様にしっかり選ばれる企業に変化させなければならない。
そのためには「コロナが明けて人流が戻るから」とか「インバウンドが再開するから」などという外部環境に任せた回復だけを待っていてはいけない。だからMSワラントによる追加の資金調達を決断した。ワラントに対する市場の評価はさまざまだろうが、とにかくこの時期に市場から調達し、前向きな投資を行うことが生き残るためには不可欠だ。
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