アンパンマン施設の「スルー対応」が悪手過ぎた訳 危機対応において「お答えしかねます」はご法度
こうした炎上事件やトラブルにおいて、当事者が無視する「スルー対応」は危機管理コミュニケーションとしてどうなのか、考えてみたいと思います。
トラブルが発生した際、人はどんな対応をするでしょうか。
自分が迷惑をかけられた側であれば、即座に「怒る」「反発する」「声を上げる」など、シンプルに即レスすることでしょう。一方で、自分が“やらかした側”だった場合はどうでしょう。
自ら意図せずして起こしたトラブルには、即座に対応できないことは珍しくありません。「スルーしてしまう」のではなく、どうしてよいかわからずフリーズしてしまい、結果として何も対応できないというのは、かなりよくあることです。しかし、足を踏んだ側は覚えていなくとも、踏まれた側はそうはいきません。相手は被害を受けたと感じているのですから、当然何もしないでは済まないのです。
また、意図的にスルーする、つまり「黙殺する」という反応も1つの選択肢です。トラブルを起こした芸能人の中には、報道陣から“フルボッコ”にされるのが火を見るより明らかな場合、謝罪会見などは開かず、ひたすら黙殺して何も語らないという人もいます。しかし、逃げ隠れしたまま復活できた芸能人はいません。そのまま芸能界からもフェードアウトしてしまった人ばかりです。
「ミスはあってはならない」という精神論
2022年4月に発生した知床遊覧船沈没事故では、運航していた遊覧船会社の社長が、事故発生の4月23日から5日目にようやく会見を開いたという例があります。この社長はマスコミなどの取材にも応じず、事故当初は名前すらも出ていませんでした。
謝罪会見は、社長の土下座から始まり、終始要領を得ない受け答えや、ピント外れの質疑応答など、まったく事態収拾の意味をなさずに終わりました。
意図して時間を稼ぎ対策していたのだとしたら、もっと対応の準備ができたはずですが、残念ながら“中身がゼロ”といえる会見から想像するに、ただ逃げ隠れしていただけで、準備はできていなかったのでしょう。この会社の事業許可は取り消されました。
このケースとは違い、重大な人身事故が起きたわけではないアンパンマンミュージアムの一件ですが、黙殺は危機対応として悪手としかいいようがありません。
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