アンパンマン施設の「スルー対応」が悪手過ぎた訳 危機対応において「お答えしかねます」はご法度

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三国志時代の曹操の軍師・郭嘉(かくか)は北方征伐において、「兵(軍隊)は神速(神の如き速さ)を尊ぶ」と敵の不意を突いての奇襲を進言し、軽装での突撃による電撃的勝利を果たしました。戦いにおいて「速さ」が大切なことは、古来いわれています。

危機との“戦い”においても同様だと思います。初動での迅速な事態収拾は絶対的に欠かせません。スルー対応はリスクを増やすことはあっても何一つ成果をもたらさないといえるでしょう。

「コールセンター」の対応も企業からのメッセージ

アンパンマンミュージアムの例に戻ります。

初動対応において、「スルーという判断をしたのは誰なのか」がカギです。コーポレートイメージに直結するリスクをはらんだ問題を見抜けなかった責任があります。

つまりは経営責任だと私は考えます。利用者の子どもや目の不自由な方に事故があれば、もはや存続できなくなるほどのダメージになるという想像力を働かせる責任が問われています。現場のクレーム処理の1つにすぎないとして関与していなかったとすれば、こうした施設の運営責任は果たせていないでしょう。

クレームや問題発生の情報を吸い上げる仕組みは、きわめて重大です。そして、そうした危機の芽の可能性があれば、とにかく素早く、“神速”をもって対応できることが「危機対応」です。

その危機対応は、今回のようなSNSやメディアによって拡散された大がかりなクレームだけでなく、例えばコールセンターに寄せられたものへの対応なども重要となります。

「アフターサービスNo.1」や「顧客満足度」をアピールする広告をよく見かけますが、実際にはコールセンターの電話番号すら開示していない、という企業があります。ようやく見つけた連絡先に電話しても有料のナビダイヤルに回され、しかもコールセンターは常時パンク状態で長い時間待たされるということは珍しくありません。

まずはご自身の会社がどこまで危機対応できているかどうか、ぜひアフターサービス部門に電話で問い合わせしてみてください。そもそも電話番号が見つからない、などということも含めて、その対応が貴社がユーザーに発しているメッセージとなるのです。

増沢 隆太 東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家

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ますざわ りゅうた / Ryuta Masuzawa

東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。コミュニケーションの専門家として企業研修や大学講義を行う中、危機管理コミュニケーションの一環で解説した「謝罪」が注目され、「謝罪のプロ」として数々のメディアから取材を受ける。コミュニケーションとキャリアデザインのWメジャーが専門。ハラスメント対策、就活、再就職支援など、あらゆる人事課題で、上場企業、巨大官庁から個店サービス業まで担当。理系学生キャリア指導の第一人者として、理系マイナビ他Webコンテンツも多数執筆する。著書に『謝罪の作法』(ディスカヴァー携書)、『戦略思考で鍛える「コミュ力」』(祥伝社新書)など。

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