つまり、この資金調達ラウンド前のあなたの持分が10%だとすれば、このラウンド後には8%になる。
たいていの場合、会社は当然その後のラウンドでも資金調達を続ける。往々にして調達額は次第に増加し、(望むらくは)バリュエーションもかなり高くなる。
その後10%の会社株式と引き換えに、2000万ドルの資金を調達することになった場合、この10%の発行により、各株主の議決権割合が弱まる。
あなたは8%保有していたが、今や7.2%になる。
よって当然、バリュエーションに関するわたしのコメントに対して、次のような反論が出てくるだろう。
最初の資金調達で会社を過大評価され、結果的に10%未満に持分が希薄化したとしても、どのみち7.2%に落ち着くなら、2回目の資金調達で過小評価された代償を払うことを気にする人がいるだろうか?
従業員はバリュエーションをこう捉える
理論的にはあなたの計算が正しいことを、しばし認めよう。
だが、さらに深いところに重大な影響が生じる。
従業員の期待と感情は、会社の発展に大きく関わる。雇用機会の多い優秀な従業員は、個人的な成長目標を達成できる、優れた会社で働きたいと思う。
従業員の雇用と能力開発、顧客目標、製品目標、財政目標など、会社があらゆる点で順調なときには、従業員を引き留め、やる気を引き起こすことは容易である。
会社の成長が従業員個人のキャリアの成長となるような勝利チームにいられるのは、誰だってうれしいだろう。
だが、会社がその目標達成に向かっていても、資金調達に失敗するようなことになれば、事態は難しくなる。
とくに企業のバリュエーションは、従業員が当座の成功の指標として注目する(あなたがそう望むかどうかにかかわらず)、非常に目立つ外的な基準だ。
勢いが止まっているように見えると、会社がどれほど発展しているかCEОのあなたが述べても、従業員は果たして本当なのかと思うようになる。
そのような場合は、資金面のパートナーが、あなたや社内の人物とは会社の進展について異なる評価を下している理由を、せめて説明する必要がある。
結局、CEОであるあなたにとって最善のストーリーは、よく言われるように「右肩上がり」のバリュエーションのグラフを示すことだ。
会社のバリュエーションが、あなたが語る会社のサクセス・ストーリーと矛盾していれば、説明しなくてはいけないだろう。
その説明がたとえ正直で事実に即したことであっても、そもそも説明しないですむほうがはるかにいい。
以上、予想より低額でも前回のラウンドより高額の資金を集めるという、次善ではあるが妥当な状況について述べた。
事業の進行に支障が出るのは、まったく資金調達できなかったか、前回のバリュエーションよりも低い額しか得られなかった場合である。
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