ベンチャーの「過剰な資金調達」が危険な理由 一流VCが説く正しい「ラウンド」での調達とは

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たとえば、あなたが企業向けソフトウェア・アプリケーションを開発しているとしよう。

シリーズBの投資家は、せめて製品の最初のバージョン(ベータ版ではなく、たとえ機能が不完全であっても、商業化が可能な最初の製品)が作られていることを知りたいと思うにちがいない。

顧客に対してその製品のデモを実行したことや、その製品を購入したいという企業との契約があるかどうか、投資家は知りたいと思うはずだ。

1000万ドルとまではいかなくても、顧客との取引が300万ドルから500万ドルくらいあれば、シリーズBの投資家に新しい資金提供への興味を抱かせるには十分だろう。

なぜ会社に必要な資金を一度に調達しないのか

このような事実を想定した場合、シリーズAであなたが決定すべきことは、シリーズBで資金調達しようとする前に、1年から2年間でマイルストーンを達成するためには、いくら資金を調達する必要があるかということだ。

もちろん、ある程度まではスプレッドシートを使えばいいのだが、計画どおりにいかない可能性についても盛り込んだ、あなたのCEОとしての状況分析もこれには含まれる(計画どおりにいくことなど決して何ひとつないからだ)。

ここで当然、なぜ会社に必要な資金を一度に調達しないのか、資金調達ラウンドという考えがなぜ必要なのか、という疑問が生じる。まず言えるのは、こういうことだ。

IPОを達成して成功企業となるソフトウェア会社は、少なく見積もっても1億ドルを調達することになる(一部ではこの数倍になるときもある)。

そもそも事前にこの額の小切手を切るVCは、そう多くはない。

それに、その金額を全額調達したとしても、そのための条件──とくに、あなたが受ける評価と、会社のバリュエーション──はひどく高くつくことになる。

資金調達を何度かに分けて徐々に大きくすることで、機会をディリスク(リスクを小さくすること)でき、起業家であるあなたはバリュエーションの向上という恩恵を受けられるようになる。

一方のVCは、こうしたマイルストーン達成にもとづいた企業の総エクスポージャー額を適切に判断できる。

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