イトーヨーカ堂創業者が愛誦した「商人」の極意 「安いニッポン」の到来を30年近く前に語っていた

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鈴木氏が経営から去った後も、セブン&アイの経営は揺さぶられ続けている。ヨーカ堂を含め経営不振の事業がコンビニの足を引く現状に、ファンドから繰り返し抜本的な改善策を求められているのだ。

伊藤氏が死去する前日の2023年3月9日、セブン&アイHDはヨーカ堂の店舗を2026年2月末までに2割超削減すると発表した。創業の苦楽をともにした伸子夫人には2022年1月に先立たれた。ヨーカ堂の「祖業」を偲ばせるものはどんどん減っている。

常に「変化」を続けるという覚悟

こうした状況を伊藤氏は悲しむだろうか。そうとも限るまい。伊藤氏の愛誦した「商人の道」にこうある。

「商人はどこからでも養分を吸い上げられる浮草でなければならぬ。その故郷は住むところすべてである」

「先祖伝来の土地などという商人は一刻も早くそろばんを捨て、くわを取るべきである」

そこに込められたのは、顧客のニーズに合わせて変化を続ける商人としての覚悟だ。

顧客こそ最優先で、次が従業員、株主は最後だと語っていた伊藤氏は、一方で日本におけるROE重視経営の先駆者でもあった。資本の論理が求める変化、そして顧客が求めるビジネスモデルの変容と従業員の利益をどうバランスさせるべきか。透徹した経営観に基づく未来像を聞いてみたかった。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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