米国が震撼「銀行パニック」が恐ろしい深淵理由 一流経済学者が教える、1913年FRB創設の裏側

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取り付け騒ぎを防ぐためにできることはあるでしょうか?(写真:HIT1912/PIXTA)
アメリカのシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻が発表され話題となるなか、バイデン大統領は銀行システムの安全性を強調するなど、不安の払拭に注力している。
過去にも、金融機関の破綻と取り付け騒ぎは、何度も経済危機を引き起こし、1913年のアメリカの中央銀行(FRB)創設の引き金にもなった。このいきさつについて、2人のノーベル経済学賞受賞者が「経済の本当の仕組みを記述する」ために書いた『アニマルスピリット』から抜粋・編集してお届けしよう。

1907年の銀行パニック

19世紀を通じ、定期的に銀行パニックが生じた。預金者たちは文字どおり銀行に長蛇の列をなし、自分より先に並んだ人々が銀行の最後の一銭を引き出して銀行がすっからかんになってしまうのではとびくびくしていた。

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こうした取り付け騒ぎは伝染した。一つの銀行が不渡りを出したという知らせが流れると、他の銀行でも預金者たちは行列を作った。危機の前には何の問題もなかった銀行にさえ、預金者が殺到したら苦労することになる。

預金者全員がおびえて預金を引き出そうとしたら、その要求すべてに応えられるだけの現金はないかもしれない。

世間にしてみれば、1907年の銀行パニックで堪忍袋の緒が切れた。またもや同じことの繰り返しではないか! 1907年にニューヨークのニッカーボッカー信託銀行が通貨支払いを停止したことで、金融危機は手に負えなくなったように見えた。

そこから取り付け騒ぎが広がった。

ニューヨーク以外にある国内銀行は、ニッカーボッカー信託銀行を含むニューヨークの大銀行に預金を持っていて、かれらは自行の預金者が通貨を要求してきたら、そうした預金を使おうとあてにしていたのだった。

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