取り付けでスピード破綻するのは特別な銀行か シリコンバレー銀が示すデジタル通貨のリスク

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取り付けは銀行の存在意義と背中合わせにある。デジタル化で銀行取引の利便性が増す一方、預金の脆弱性は高まっている。

シリコンバレー銀行のスマートフォン画面
預金の4分の1が1日で流出したネットバンキングの威力(写真・Bloomberg)

3月10日、米シリコンバレー・バンク(SVB)が経営破綻した。住宅ローン担保証券(MBS)や米国債などの売却により約18億ドルの損失を計上し、22億5000万ドルの増資を発表した2日後のことであった。

この電撃的な経営破綻の裏には、ツイッターやSNSの情報を通じた大規模な「銀行取り付け(bank run)」があった。報道によると3月9日だけでも預金全体の24%、約420億ドル(約5兆6000億円)の引き出しがあった。この大規模引き出しが今回のスピード破綻の大きな原因である。

なぜ銀行はそれほどまでに預金取り付けに対し脆弱なのであろうか。原因は、銀行業の根本に関わる「満期の変換(maturity transformation)」機能、つまり「短期で借りて、長期で貸す」ことにある。

預金を預けっぱなしだから、貸し出しができる

一般的に、銀行はいつでも引き出し可能な預金(要求払預金という)を発行し、多くの小口預金者から短期的に資金を集める。そして、その資金の一部を準備などの流動性資産として保有し、残りをローンとして企業や家計へ長期的に貸し出している。

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