「30年待った」台湾“山あり谷あり"LRT新線の効果 山間部新興住宅地の足、本領発揮はまだまだ先?
LRTとともに、各駅から斜面に並ぶ住宅地への「ラストワンマイル」の交通も整備された。台湾では、駅の周りにシェアサイクルである「YouBike」の駐輪場が設置されその役割を担っているが、坂道が多い安坑LRTの沿線では開業に合わせて、集合住宅と駅の間を巡回するシャトルバス6路線が設定された。LRTの車体と同じカラーリングのマイクロバスが15~30分間隔で運転される。
LRTの開業で、ラッシュ時には少なくとも1時間は要していた台北市中心部へのアクセスが10~20分ほど短縮されると期待されているが、課題も残る。
始発駅となる十四張駅は、接続路線が一部区間のみ開業の台北MRT環状線だけで、台北市の中心部に出るにはさらに乗り換えが必要になる。安坑地区にはすでに高速道路を経由して台北101方面に向かう快速バスやMRTのオレンジライン、グリーンラインに接続するバス路線が多数設定されており、競合交通機関となる。交通費の観点でも安坑LRTの運賃は距離に応じて20~25元と、バスの初乗り15元より高い。
本領発揮は「環状線」全通後か
乗車促進を目的に、安坑LRTを運営する新北捷運は一般券で6元割引となる台北市・新北市共通の乗り継ぎ割引に加え、200元の乗車で50元のキャッシュバックが受けられる独自のプログラムを提供している。これらを組み合わせると一乗車あたりの価格を9元から12元ほどに抑えることができるが、ダイレクトかつ安価に中心部へ行けるバスと比べると複雑さが否めない。
実際、新店区の中心部から沿線の大学に通う学生は「2回も乗り換えが必要のうえ、LRTや環状線の待ち時間も長いし使い物にならない。通学や遊びに行く程度の移動ならバイクで充分」と不満を漏らす。一方で、「環状線の接続駅から高速鉄道や空港MRTに乗り換えられるようになるので便利」と、郊外間や中長距離の移動がスムーズになるという声も聞かれた。
2030年代に予定されるMRT環状線の全通後は、夜市で有名な台北北部の士林地域や、台北最大の取引額を誇るサイエンスパークが立地する內湖地域へ一度の乗り換えでアクセスできるようになる。LRTが本領を発揮するには、それまでタイミングを待つこととなるだろう。山に囲まれた2400km²ほどの土地に680万人が暮らす台北を隅から隅まで繋ぐ鉄路ネットワークの形成は、まだ走り出したばかりだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら