「30年待った」台湾“山あり谷あり"LRT新線の効果 山間部新興住宅地の足、本領発揮はまだまだ先?
筆者が乗車したのは2月27日。今年は同28日の「228和平記念日」に連なる25~28日が4連休となり、その3日目にあたる。開業から3月12日までの約2カ月間は運賃が無料となっただけあり、始発駅の十四張駅では大行列が見られ、連休4日間の乗客数は9万人に達した。
列車は十四張駅を発車すると、「安心橋」と呼ばれる斜張橋を通過。長さ502m、中央径間は225mと鉄道専用橋としては台湾一の長さを誇る。路面電車タイプの車両が走るLRTであることを忘れさせる高規格な設計だ。橋を越えると路線名でもある安坑地区へ入り、住宅地の間を防音壁に囲まれた高架線のカーブをゆっくりと進む。90度の急なカーブも多く、用地取得の苦労がしのばれる。3駅を9分ほどかけて進むと安康駅に到着。この駅は、2面3線を擁する折り返しに対応した駅である。
ここが折り返し駅となっているのは、その先の様相がガラッと変わるためである。安康駅を発車した列車は、高速道路を横断すると、60パーミル(1000m進むたびに60m上る)に及ぶ急勾配の山間トンネルを走り、一気に高度を上げる。
この勾配は台湾で定められているLRTが走行できる傾斜度の限度であり、まるで山岳鉄道のような様相を示す。そして、トンネルを抜けると山に囲まれた谷地を走る。これは台北の盆地状の地形に起因している。
山の斜面に立ち並ぶマンション群
この谷地は山の斜面に多くの集合住宅が林立する新興地帯であり、まるで香港のマンション群を思わせるような景色が飛び込んでくる。
安坑地区が属する新店区の人口の45%、約12万人がこの地域に集中しており、線路と並行するエリアには病院や大学、教育施設も並びこの地区の生活拠点が密集している。このため、1編成265人が定員の車両ではラッシュ時の混雑がさばききれないことが懸念され、区間列車運転用に折り返し線を設けたわけだ。
実際、3月6日から始まった本運行ではラッシュ時間に十四張―安康間の区間列車が設定され、同区間では最大で6分に1本の運転を実現している。筆者の乗車時も、途中駅では客を積み残して発車する状況が見られた。
山間部に入り、5駅ほど行くと列車は終点の双城駅に到着。ここまで来ると未開発の山地が見受けられる。この先にも線路は伸びるが、列車の折り返しと車両基地への引き込み線として使われ、旅客用ではない。
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