「30年待った」台湾“山あり谷あり"LRT新線の効果 山間部新興住宅地の足、本領発揮はまだまだ先?

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開発計画では、沿線を4つのエリアに分け、終端部は「都会のグリーンツーリズムエリア」と位置付けており、ここからはバスに乗り換えると二叭子植物園といった森林レクリエーション施設にアクセスできるほか、蛍や蝶の生態保護区、台北では数少ない別荘地が存在し、観光利用やTODによる都市型農園の拡充を見込んでいる。台北は緑が近い都市だが、LRTの開業で大自然をより身近に楽しめることとなりそうだ。

双城駅
終着駅の双城に入線する車両(筆者撮影)

安坑LRTに先立ち、2017年にはバイパス道路も整備された。安康駅から双城駅まではLRTと並行し、山を下ると道路は高速道路のジャンクションに接続する。長い間、ラッシュ時の交通渋滞に悩まされていた安坑地区にとって道路とLRTの建設が同時に進められたことは大きな進化といえよう。

特筆すべきはトンネルの区間で、道路の上下線とLRTの計3本が並行して掘られ、台湾では例を見ない設計として地元メディアでも大きく取り上げられた。とくに双城駅と車両基地を結ぶ「双安トンネル」は、軟弱地盤に加えてトンネル間の間隔が1.5mという要求の中、施工の難度に対する技術の高さが認められて、日本の内閣に値する行政院や土木工事学会などによる4つの賞を受賞している。

双安トンネル
道路と線路の3つのトンネルが並ぶ「双安トンネル」と折り返し準備を行う列車(筆者撮影)

「国産化率」がアップした車両

車両は台湾車両(新竹県)製で、ドイツ・フォイト社の技術支援を受け製作された。基本設計は2019年に開業した淡海LRTの車両をベースとしている。同車は「国車国造」をスローガンに初めて台湾で組み立てが行われた鉄道車両で、台湾の鉄道産業を引っ張るマイルストーンとされた車両だが、これが安坑LRTでも採用されることとなった。

安坑LRT車両
国産化率をアップした安坑LRTの車両(筆者撮影)

カラーリングは沿線に生えるススキをイメージした光沢の入ったカーキ色で、それ以外は一見すると淡海LRTと同じ車体に見える。しかし、目に見えないところで大きな変化があった。国産化の割合が淡海LRTの22%から42%まで向上したのだ。

先頭の繊維強化プラスチック、車体、及びネジ、ナットといった小部品に加え、安坑LRTでは客室ガラスや照明、空調といった設備にも台湾産の部品が取り入れられた。将来的に建設が予定されている他路線の車両では、台湾産比率を50%まで引き上げることで、予備パーツの確保やメンテナンスをより容易にするとしている。また、車両の技術支援と同じくドイツの企業であるテュフ・ラインランド社の認証を受けており、安全性の高さも強調している。

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