「ワンピース」が何度も我々を魅了する本質的理由 「FILM RED」ルフィとウタが戦わせる"自由"とは何か

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シャンクスという最重要人物の存在感

そんなルフィの原点とも呼べる存在が赤髪シャンクスだ。『RED』の一番の見どころは、なんと言っても、シャンクスとルフィの共闘シーンである。この2人がタッグを組むだけで必見であり、映画の中盤、シャンクスが登場した瞬間には誰もが「来たー!」と心躍ったはずだ。

シャンクスは『ONE PIECE』の中でも、群を抜いて特別なキャラクターだ。第1話から登場し、ルフィの原点と言っても過言ではない。「海賊王になる!」という言葉は、シャンクスのような男になる(シャンクスを越える男になる)と同義と言っていい

ウタの父であり、ルフィの原点であるシャンクス(『ONE PIECE FILM RED』公式サイトの動画より)

ルフィのトレードマークである麦わら帽子はシャンクスから渡されたものだ。「いつかきっと返しに来い……立派な海賊になってな」という言葉とともにシャンクスが去って以来、2人は顔を合わせていない。

再会シーンは本連載におけるクライマックスの一つであることを考えると、まだ会ってはいけないルフィとシヤンクス。しかしそれを乗り越えるように、表の世界と裏の世界で2人が共闘するというのは、なんともグッとくる設定だった。

ウタというキャラクターがもつ”時代性”

そんなシャンクスの娘として登場したウタ。「家族」は『ONE PIECE』では度々描かれるモチーフだが、今回も、シャンクスとウタ、ウタとゴードン(エレジア元国王)、ウソップと父など、物語の中に、家族的な関係性がたくさん詰まっていた。

私たちは人間である限り「家族」を求めずにはいられないが、それゆえ起こる問題に苦しんだりもする。家族だからと言って必ずうまくいくわけではないし、時には受け止めなければいけない悲しみも出てくる。

『ONE PIECE』は、時に人生の教科書のように、私たちが抱える辛さに答えてくれる時がある。例えば、家族とは必ずしも血の繋がりだけを意味するわけではないなどといったように。『ONE PIECE』は繰り返し、様々な角度から家族を描き、私たちに気づきと勇気と優しさを与えてくれる。

さらに『RED』では現代的な時代性が描かれていた。映画の冒頭で、人々は海軍と海賊、そのどちらにも希望を持ちきれていないという世界観が提示されていた。そんな中でウタは「みんなが楽しくいられる平和で自由な新時代」を作るためにライブを始めた。ルフィとウタの考える「自由」の違いが、『RED』のテーマそのものと言っていいだろう。

ウタの考える自由とは、戦争も貧困も差別もない平和な仮想世界。ウタは自身の経験から、みんなが辛い思いをせずに笑って楽しいまま暮らせる世界を作ろうとする。自分自身の命を犠牲にして、みんなを永遠に「夢の世界」へといざなうのだ。

劇中でウタは観客にこう問いかける。

「病気やイジメから解放されたいってのはウソ?」

「海賊におびえなくて済む毎日が欲しいって言ってたじゃない!」

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