「考え方が昭和すぎ」嫌われる年配社員の"活用法" 儒家・荀子「性悪説」で読み解くリーダーの資質
これをビジネスにあてはめると、バリュー(価値観)とシステム(制度)のバランスと言い換えることができます。
「会社の価値観に沿っていれば良い会社になる」と信じるのはバリュー経営(価値観にもとづいた経営)で素晴らしいのですが、それだけでは楽観的でナイーブすぎる。会社には適切なインセンティブを用いた信賞必罰の評価制度が必要なのです。
ルールを守らない人物をどう扱うべきか
評価制度のシステムを考えるにあたり、現代にも通じるしくみは、儒教の経典『書経』の中に見ることができます。
この言葉は西郷隆盛が引用したことで知られるようになり、現代では「功あるものには禄(ろく)を与えよ。徳あるものには地位を与えよ」という表現が使われています。
つまり「人格や行いの良い人材はリーダーに据える」「成果を挙げた者には報酬(ボーナス)で報いる」というわけです。
徳の高い人物にリーダーを任せる。
この方針は組織の生命線です。なぜなら、リーダーとは人の上に立ち、人に影響を与えて組織を成長させていく存在だからです。部下はリーダーの行動を真似しますから、良い行動のお手本にならない人材をリーダーに据えてはいけないのです。
問題は「結果は出すがルールを守らないリーダー」の取り扱いでしょう。物語の中の馬場さんは、このタイプかもしれません。成果にこだわりすぎていて、メンバーの模範にはなりにくい人物です。
こういう人に対して、リーダーは「良くない」と感じながらも、扱いにくさからお茶を濁したような対応をしがちです。
けれども、馬場さんも係長である以上、人に影響を与える立場ですから「良い行動」をしてもらわなければいけません。
けれども、馬場さんをジャッジする前にもうひとつ考えてみたいことがあります。それは「馬場さんは本当に悪いのか?」という点です。
私たちは日々、人に対して「良い」「悪い」という評価をします。しかし、人間の行動は多面的・複層的なので、その複雑さにも目を向ける必要があります。
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