コンプサイエンスは、給料の支払いなど、より差し迫った懸念事項が解消するまで、マーケティング、販売、人材採用に関連した支出を止める考えだ。バトラーは、業界に悲観的な見通しが渦巻いていることをふまえ、大きな危機に備えてきたと話した。
それでも、「それがシリコンバレー銀行になるとは思ってもみなかった」と言う。「まったく予想外だった」。
苦しいマクロ環境に拍車
ベンチャー投資家のシール・モーノットは、9日に自身のベンチャーキャピタル、ベター・トゥモロー・ベンチャーズを通じて投資先のスタートアップ企業に、念のため資金を短期国債に移し、ほかの銀行に口座を開設するよう助言したと話した。
「取り付け騒ぎがいったん始まると、止めるのは難しいからだ」
モーノットの会社が投資しているスタートアップ企業の中には、資金を動かさない選択をしたところもあれば、銀行の破綻までに資金の移動が間に合わなかったところもある。モーノットによれば、目下、こうした企業の最大の懸念は給与の支払いであり、経費の支払いをどう切り抜けるかが、それに次ぐ懸念事項になっている。
テック系以外のスタートアップも対処に追われている。『ニューヨーク・マガジン』や『ザ・ヴァージ』を発行・運営するヴォックス・メディアは、シリコンバレー銀行にかなりの現金を集中させていると、同社の保有資産内容を知る関係者は語った。シリコンバレー銀行が発行する同社のクレジットカードは、10日に使えなくなった。
ヴォックス・メディアの経営に詳しい別の関係者によれば、同社は給与の支払いを含め、業務に支障が出るとは考えていない。ヴォックス・メディアの筆頭株主であるペンスキー・メディアは声明で、ヴォックス・メディアに追加資本が必要となった場合でも対応する準備はできているとしつつ、問題の発生を見越しているわけではないと付け加えた。
ベンチャーキャピタルの多くも、迅速かつ円滑な投資を行うためにシリコンバレー銀行の与信枠を利用していたと、DCVCのオッコは語った。それらの与信枠は現在、凍結されているという。
オッコは、スタートアップ企業やテック企業の間で連鎖破綻が起こるとはみていないとする一方で、「スタートアップ業界はすでに苦しいマクロ環境の真っただ中にあり、痛みや摩擦、不確実性、複雑さ」が広がることが予想されると話した。
(執筆:Erin Griffith記者)
(C)2023 The New York Times
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