エリート官僚「過度な忖度」に走った2つの決定打 アベノミクス導入も経済成長を妨げた日本の失敗

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財務省
(写真:barman/PIXTA)

官邸が幹部人事を掌握した途端に、官僚は、公僕たる矜持も投げ捨て、政治家の意向を忖度して働く下僕になってしまったといわれた。

かつては、事務次官をはじめ幹部官僚の人事権は各省庁にあり、大臣や次官などの話し合いで決まっていた。例えば、昔の大蔵省時代は、次官経験者が新橋の料亭で話し合い、次の次官を決めていたとされる。それが、次官などの幹部人事が内閣に移ったことで、「過度の忖度」へとつながっていった。

人間として、自らの人事権を持っている権力者に対しては、どうしても媚び、言うことを聞かざるをえないだろう。「忖度」には、官僚の人事権の所在が大きくかかわっていることが見えてくる。

「良心」という判断基準が必要

かつて、ある通産事務次官が「国家の経済政策などは、政財界の思惑や利害に左右されてはならない」と語っていた。

財務省を中心に、霞が関の官僚にとっては、政治家や政府に対する忖度はある程度はやむをえない面があるのかもしれないが、そこには当然、「良心」という判断基準が存在しなければならないし、公文書の改ざんのようなことは、絶対に許されることではない。いかなる状況下でも、民主主義国家の根底を揺るがすようなことはしてはいけないのだ。

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それが現在では、財務省の元理財局長の国会答弁のようなことが起こるようになった。

「記録はすみやかに廃棄しました」

元理財局長が森友学園への国有地売却を巡って、交渉記録の破棄を断言した瞬間だ。その発言が、公文書改ざんなどのような許されない不祥事を生んでいった。

この答弁を聞いた、ある財務省のOBがこうつぶやいたという。

「見事に泥をかぶった。だけど、これで彼の官僚人生は終わったね」

これらの不祥事を2度と起こさないようにするためにも、「政と官の在り方」を真剣に考える必要があるだろう。

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