エリート官僚「過度な忖度」に走った2つの決定打 アベノミクス導入も経済成長を妨げた日本の失敗

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霞が関
アベノミクスを今どう評価すべきなのでしょうか(写真:Katsuya-Noguchi/PIXTA)
日本経済に大きなダメージを与えたバブル崩壊。その後の低迷から脱することは、つねに歴代政権の主要な課題であり続けた。しかし、あれから30年経った今でも、日本経済は長いトンネルを脱し切れていない。
戦後のどん底から急速な経済成長を成し得た日本。その底力は、今どうなっているのか。再び成長の軌道に乗ることはできるのか。そして、戦後2番目の好景気をもたらしたと言われるアベノミクスを今どう評価すべきなのか。バブルの前夜から絶頂、崩壊と後遺症、そうした裏側を現場で見てきた大和証券の元常務取締役・恩田饒氏は、そのカギを握るのは「金融政策」と「官僚の質」だと見る。
「バブル胎動からアベノミクスまで」のリアルな告白ドキュメント『実録 バブル金融秘史』から一部を抜粋、再構成してお届けする。

達成できなかった「物価上昇率2%」

アベノミクスの問題点の1つは、金利政策の、日本経済に与える影響度合いが低下してきている点を軽く見たことではないだろうか。

例えば、「公定歩合」である。公定歩合は、日銀が民間金融機関に融資する場合の基準金利である。中央銀行としての政策スタンスであり、強力なシグナルだ。従来は、円の金利体系を決める金融政策の柱であったが、預金金利の自由化は、1994(平成6)年10月に完了している。そのため、公定歩合と市場金利は直接には連動しなくなっていたし、バブルが弾けて企業の資金需要が低下し、金融機関への依存度が低下していた中では、多少金利を低めに誘導しても経済全体に与えるインパクトは小さくなっていた。

バブル時代には、預金で集めた資金の80%以上は貸し出しに回せていた。企業は資金さえあればどんどん成長できたから、借り手には事欠かなかった。しかし、その後のデフレ下で企業の資金需要が低下すると、貸し出しに回す比率は60%を下回るようになる。そのような状況では、金利政策の影響度合いも低下せざるをえない。

にもかかわらず、「異次元の金融緩和」として公定歩合を下げ、最後はマイナス金利まで導入した。その効果が限定的だったのは、当然といえば当然である。

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