エリート官僚「過度な忖度」に走った2つの決定打 アベノミクス導入も経済成長を妨げた日本の失敗

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その後、気候変動やロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあり、世界的な資源不足で、日本の物価も2022年10月には3.6%上昇した。あれだけ苦心していた「物価上昇率2%」はやすやすと達成されたわけである。

そんな中、2022年12月20日の金融政策決定会合で、日銀が市場を驚かせる決定をする。同年9月末の、日銀による10年物国債の保有割合が50.3%と半分を超えたこともあり、何も手を打てないだろうといわれていた日銀が、10年物国債の利回り上限を、これまでの0.25%から0.5%へ引き上げたのだ。

振り返ってみると、2022年10月頃から、黒田総裁の発言内容には変化が見えていた。衆院財務金融委員会で、長短金利の誘導目標を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)を続ける考えを示しつつ、「2%の物価安定目標が見通せる状況になったとき、金融緩和の枠組みを柔軟化していくことは、1つの選択肢としてありうる」と答弁している。

2023年4月の総裁交代をひかえ、レームダック化していた中央銀行機能の回復を鑑みて、日銀が動き出したのだ。2月の金融政策決定会合も含め、日銀の今後の動向に注目が集まっている。

「いちばんダメージを被るのは日本」

筆者は、この10年の間に、日銀は中央銀行の機能を喪失したと考えている。本来の役割は「物価の安定をはかる」ことだったのが、最近は「金融政策によってマーケットを支える」役割のウエイトが大きくなってきているからだ。

実際に、安倍政権下のわが国の景気拡大は、アベノミクス効果もあり、2012(平成24)年12月から2018年10月まで71カ月続き、戦後最長だった「いざなみ景気」(2002年2月から2008年2月までの73カ月間続いた好景気)に迫る好景気だった。

しかし今、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並んで世界三大投資家と称されているジム・ロジャーズが、その著書『世界大異変』(東洋経済新報社)で日本の将来に警鐘を鳴らしている。

「お金を印刷し続ければ続けるほど、次のクラッシュがよりひどいものになる。そして、数多くの国家が痛手を負うことになるが、その中でいちばんダメージを被るのは日本になる。なぜなら日本の出生率は低く、外国人を受け入れておらず、日銀は今もなお大規模な緩和を続けているからだ」

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