ヒト致死率53%「鳥インフル」から身を守れるのか パンデミック現実味も「備蓄ワクチン」がない

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2018年6月の厚生科学審議会感染症部会で、「今後はH5N1でなく、H7N9ウイルスのほうが危機管理上の重要性が高い」との判断が下ったためだ。中国での鳥インフルエンザのヒト感染の動向を重視したという。

すなわち2019年度以降は、「H7N9」プレパンデミックワクチンに漸次切り替わってきた。ワクチンは通常3年もつが、「H5N1」のほうはもうすべて廃棄されたに違いない。

というわけで政府の読みが外れそうな今、私たちはH5N1パンデミックに対し無防備だ。従来タイプのワクチンに頼っている限り、これからも常にそのリスクはつきまとう。

そこで期待が高まるのが、「ユニバーサル・インフルエンザワクチン」だ。あらゆる種類のインフルエンザをワンショットで予防しようという、文字通り「万能ワクチン」である。

万能「ユニバーサルワクチン」とは?

そもそも一口にインフルエンザといっても、分類上は200種類を優に超える(アメリカ疾病予防管理センター:CDC)。

人類にパンデミックをもたらしうるA型インフルウイルスは、「H1×N1」など、HA(1〜11)とNA(1〜18)2種類の「亜型」のかけ合わせで、理論上11×18=198通りも存在する。そこからまたさらに細かく分岐していくのだ。また、B型インフルウイルスは、山形系統とビクトリア系統の2つに大別され、こちらも下流で枝分かれしていく。

そのうち、これまでに実際に確認されているのは約130種類で、差し迫った感染リスクと影響が見込まれるのは、20種類だという。

こうした分類上の違いは、そのまま「ワクチンの標的の違い」を意味する。つまり、インフルエンザをほぼ確実に予防したいなら、最低でも20種類の標的を狙う20種類のワクチンが必要、ということだ。

ところが従来の不活化ワクチンでは、20種類準備することは現実的でなかった。製造自体は不可能ではないが、インフルウイルスは変異しやすく、一方で不活化ワクチンは開発から大規模製造までには最低でも1年半以上の年月と労力、コストを要する。到底見合わない、という判断だった。

そこで毎シーズン、あらかじめ最も流行しそうな4種類に絞ってワクチンを製造し、混合して接種されてきた。そのため予想が外れて流行種と合致しないことも多く、ワクチンの効果が疑問視されてきた。

ユニバーサル・インフルエンザワクチンの開発競争に火がついたのは、2010年のことだ。アメリカ国立衛生研究所・アレルギー感染症研究所(NIH・NIAID)の所長だったアンソニー・ファウチ氏が、実現を目標として明言した。前年の新型インフルエンザ(H1N1)パンデミックがきっかけだった。

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