「パトカー抜き去り」認知症男性の大胆すぎる運転 50~60代で発症する前頭側頭型認知症の実態

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この事態に一番驚いていたのは、他ならぬパトカーに乗っていた若い警察官だった。覆面パトカーならいざ知らず、どこからどう見てもパトカーだとわかるのに、それを堂々と抜き去るなんて。警察官の目の前で、違反をした本城さんの行動がまったく理解できなかった。また、本城さんは、ビシッとスーツを着こなしていて、受け答えもしっかりしていた。だからこそ警察官は混乱してしまい、現場に家族が呼び出される事態になってしまったのだ。

連絡を受け、すぐさま飛んできた本城さんの息子さんも、単なる交通違反ではないということに驚きを隠せなかった。

「確かに、たまに物忘れをすることはありましたが、それはよくあるレベルのことですし、これまで業務にも日常生活にもまったく支障はありませんでした。なのに、まさかこんなことになるなんて」と、事件を起こして小さくなっている本城さんを見ながらそう言った。

そこから、本城さんはすぐに専門の病院で検査を受けることになった。問診に加え、CTやPET検査などを受けた結果、本城さんは、前頭側頭型認知症と診断された。

50~60代で発症する前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は難病に指定されていて、人格や記憶を司る前頭葉や側頭葉が萎縮して起こる認知症である。発症すると、社会性が欠如したり、我慢ができなくなったりして、人格や行動の変化、言語障害などの症状が出てくるのだ。また、50~60代という比較的若い元気なときに発症するので、自分が病気であるという意識を持ちにくく、また家族が気づくのも遅れる場合がある。

前頭側頭型認知症の特徴の1つとしては、自分がルールになりやすいということが挙げられる。守らなければならない世の中のルールを認識することが、次第に苦手になっていくのだ。邪魔だからと無理に追い抜いたり、これがほしいからと万引きをしてしまったりすることがあるので、以前と比べて性格や行動が変わっていないかを、注意しなければならない。

意外なことで認知症が発覚した例としては、免許センターからの連絡でわかったということもある。75歳を越えると免許の更新の際にテストを受けなければならない。そのテストはなんなくパスできたものの、教室はどこかと何回も聞いてきたことをスタッフが不審に思い、地域包括支援センターに連絡したことによって発覚したのである。

このようなことで認知症だとわかるケースはかなりレアであるが、命を守る大事なきっかけとなった。

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