「パトカー抜き去り」認知症男性の大胆すぎる運転 50~60代で発症する前頭側頭型認知症の実態
地域包括支援センターを通じて知り合った息子さんが、その後の経過を報告しに来てくれた。
「正直、今回の出来事には面くらいましたが、結果的に病気が判明して良かったです。あのパトカーの事件がなければ、父はきっと今でも車を乗り回していたでしょう。もしかしたら、大きな事故を引き起こして誰かを傷つけていたかもしれない。父自身も大怪我をしていたかもしれない。そう思うと、警察の方には申し訳ないけれど、あの程度のことで済んで正直ホッとしています」と、息子さんは素直に自分の気持ちを語ってくれた。
免許は返納することに
本城さんの場合、この出来事がきっかけで病気が判明したため、今回の交通違反についてのお咎めはなしになった。その代わり、免許は返納することになったのだが、案の定最初はかなりいやがっていたようだ。
「俺からゴルフを奪ったら何も残らないじゃないか、と抵抗されましたね。でも父にはまだまだ経営の方で頑張ってもらいますし、僕もこれを機にゴルフを始めることにしたので、今は僕が運転して一緒にラウンドしているんですよ。いずれ会社を引き継げば、そのようなお付き合いも増えるでしょうしね。けど、父にはダメ出しされるばっかりで」と、息子さんは、素振りをしながらそう言った。
愚痴をこぼしつつも、息子さんの楽しそうな様子を見て私は安心した。
きっと本城さんは、息子さんには言わないけれど、大好きなゴルフを一緒にできるようになってうれしく思っているに違いない。本城さんは車を運転できなくなった代わりに、息子さんとのかけがえのない時間を手に入れたのだ。
「今度私もぜひ一緒に連れて行ってください」と言うと、「僕は安全運転でいきますからお任せください」と息子さんは笑いながら答えてくれた。
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