「パトカー抜き去り」認知症男性の大胆すぎる運転 50~60代で発症する前頭側頭型認知症の実態

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本城さんは65歳のバリバリの会社経営者だ。先輩経営者と免許返納の話になることもあるのだが、休日のゴルフを何よりも楽しみにしている本城さんにとっては、身体的な限界でゴルフができなくなるまでは、免許は返納しないつもりだった。まだまだ経営に携わっていたい、そのためにはゴルフができるくらい元気な身体でいなければな、そう思いながら、前の車のテールランプをぼんやりと眺めていた。

イライラが最高潮に達した本城さんの運転

熊本市というのは渋滞が頻繁に起こる都市だ。なぜなら路面電車がそこかしこに走っており、本来片側4車線であるところが、1車線使えなくなってしまうからだ。それゆえ朝夕のラッシュ時には毎日のように渋滞が起きている。

ただ救急車や消防車といった緊急車両は、路面電車の軌道内を通行することができるので、緊急時における渋滞の影響は限りなく少ない。

今日は3連休前の金曜日。家路を急ぐ車の列で道路はひしめき合っていた。

「それにしても、前の車は遅過ぎやしないか。また信号が変わってしまうじゃないか!」と、イライラが最高潮に達した本城さんは、路面電車が来ていないことを確認してから、ハンドルを右に切り、路面電車の軌道に出て前の車を抜き去った。

もちろん、路面電車と一般の車線の間には、追い越し禁止を示す黄色いラインが引かれているので、そもそも軌道内に侵入すること自体、立派な交通違反となる。しかしここで一番の問題となったのは、本城さんが抜き去った相手だった。

ウーッと急にサイレンの音が鳴り響き、「前の車止まりなさい」というスピーカーからの声で、本城さんはハッと我に返った。なんと本城さんの目の前でノロノロと走っていた車はパトカーだったのだ。

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