部品不足が世界を巡る 自動車、スマートフォンの生産も打撃
東日本大震災から2週間余り--。その影響は東北地方だけではない。ソニーは静岡や愛知、キヤノンは大分県で、デジタルカメラなどの工場を操業停止。さらに余波は海外にも広がりつつある。
東北の一企業がアップルの供給を左右
3月11日に米アップルが北米で発売した、タブレット端末「iPad(アイパッド)2」。店頭では品薄が続く人気ぶりで、25日に欧州と豪州、4月には日本を除く、アジア各国での発売を控えている。
だが調査会社IHSアイサプライは、「日本の震災によりアイパッド2の部品が供給不足になる可能性」を指摘する。アイパッド2を分解した結果、フラッシュメモリ、DRAM、電子コンパス、タッチスクリーン用のカバーガラス、バッテリーが日本製だった。うち旭硝子製のカバーガラス、AKMセミコンダクタ製の電子コンパス、ほかにバッテリーも、その代替は難しいという。
アップル向け電子部品の不足は、液晶パネルでも懸念されている。東芝モバイルディスプレイ(TMD)は、スマートフォンの「iPhone(アイフォーン)」やアイパッド2向けにパネルを供給しているが、埼玉の深谷工場は操業停止のままだ。再稼働の準備はできても、「計画停電が続くかぎり難しい」(TMD)。液晶工場はライン立ち上げに1~2日を要し、実際の生産に入ると1週間は稼働し続ける必要がある。
頼みはフル稼働に追われる石川工場だが、ガラス基板の調達先である旭硝子の子会社、AGCディスプレイグラス米沢が被災。操業は再開したものの、一部加工工程を委託する倉元製作所(宮城、岩手県)は、深刻な被害を受け操業停止中だ。TMDは在庫を消化しながら生産を進めており、ガラス基板の調達が滞れば供給に影響が出るかもしれない。アップルはTMDと韓国LGディスプレイからの2社購買のため、調達に狂いが生じるリスクを抱える。
売上高で約652億ドル(約5兆2160億円、2010年9月期)を誇るアップルと比べれば、倉元製作所のそれはたった119億円にすぎない。が、東北の一企業も、世界中に出回るアップル製品の一端を担っているのだ。