「東京一極集中」に貢献している地域ランキング 東京デッドエンド化は誰が生み出しているのか

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縮小

2020年から現在にかけて、コロナウイルスの感染拡大という「これまでの価値観での就業」に大きな変革を迫る環境変化が発生しました。これに対応して、東京都では柔軟な働き方改革の1つであるテレワークが急速に拡大し、今現在も労働者の3割弱程度がテレワークを利用していると回答しています。

多様な人材が活躍しやすい環境整備が進められているかどうか、という視点で見ると、グラフからは東京都が圧倒的であることが示唆されています。ちなみに2022年、東京都に転入超過した人口の8割以上が専門学校卒・大卒後の就職移動とみられる20代人口で、しかも男性の1.6倍の女性が増加しています。

ある東証プライム上場企業の人事部の方からは「コロナのおかげで、うちのテレワークは10年進化しましたよ。営業さんたちも無駄な立ち寄り報告がなくなりましたし、ペーパーレス化もさらに進みました。紙資料配布を部下に要求する役員はクビだ、とトップ層の鶴の一声もありました」とのお話を伺っています。

「地方大都市の人口ダムの決壊」が起こるワケ

2021年の国立社会保障・人口問題研究所の調査結果では、18歳から34歳までの若い未婚男女が最も理想とする夫婦像は「両立コース」すなわち、子が生まれても夫婦がともに働き続けるという夫婦像でした。男性の39%、女性の34%が支持しており、2位の「再就職コース(子育て期だけ妻が離職)」は男女ともに3割を切っています。「専業主婦コース」に至っては男性7%、女性13%しか理想としていないという状況です。

令和時代の若者が望むライフコースを就職後に叶えてくれそうな企業が集まるエリアに若者が集まる、それが東京一極集中ではないか、と考えれば、「地方大都市の人口ダムの決壊」がなぜ起こっているのか、その答えは明確といえるでしょう。

天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

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あまの かなこ / Kanako Amano

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、99年より同社シンクタンクに出向。専門分野は人口動態に関する社会の諸問題。総務省「令和7年国勢調査有識者会議」構成員等、政府・地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・地方創生・共同参画・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『未婚化する日本』(白秋社・監修)、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。

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