子どもが否定されたと感じる「一発アウト」の言葉 「聞いてあげている」つもりでも口を挟んでいる
養老:心理学者の河合隼雄先生は「臨床心理士が患者さんの話を上手に引き出す秘訣は何ですか?」と問われると、「相槌の打ち方です」と答えていました。
宮口:深い、深いですね。相槌にもいろいろありますから、おざなりに相槌を打てば、「ああ、聞いてないな」とバレますよね。
養老:逆に相槌1つで、「あなたの話を聞いていますよ」「同意していますよ」「あなたを受け入れていますよ」というサインを送ることもできる。
宮口:そうなんです。子どもの目を見て、しっかり相槌を打ちながら、とにかく真摯に話を聞いてあげることが第一です。それで子どもが「お父さん、どう思う?」とか「先生、どうすればいいと思う?」などと相談を投げかけてきたら、そのとき初めて答えてあげればいいと思います。
子どもの話はまどろっこしく感じられるものなので、大人としてはどうしても口を挟みたくなるものです。難易度は高いとは思いますが、そこは子どもが自分の頭で一生懸命考えて話しているのだからと信頼して、つき合ってあげてほしいですね。子どもに「いま、どんな気持ち?」とダイレクトにたずねるのはお勧めしません。
感情のコントロールが下手な子を支援するには
――認知機能が弱い子どもは、感情をコントロールするのが難しくなりますね。親や教師はどのように支援すればよいでしょうか。
宮口:感情統制に問題のある子には、タイプが2つあります。1つは、自分の感情がコントロールできない。もう1つは、人の気持ちが理解できない。大人はまず、その子どもがどちらのタイプなのかを判断するところから始めるといいでしょう。
感情をコントロールすることを教えようと思った大人がやりがちなのは、「いま、どんな気持ち?」などと質問し、子ども自身に自分の気持ちを言わせることです。これは、やめたほうがいいですね。
逆の立場で考えると、よくわかります。事あるごとに「あなた、いま、どんな気持ちですか?」と聞かれたら、誰しも答えたくないですよね? 失敗したり、間違ったことをしたりしたときなどはなおさら、自分の気持ちを言葉にするのはしんどいものです。そんなしんどいことを子どもにやらせても、ろくなことにはならない。
けれども、ほかの人を見て、「あの人はいま、どんな気持ちだと思う?」と尋ねると、意外と答えられるものです。ですから、まず「人の気持ちを言う」練習から始めるのがいいと思います。そこから「感情」というものに向き合うようになればいい。