人への影響が疑われる「ネオニコ系農薬」に迫る 映画「サステナ・ファーム」が斬った日本の農業

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そうした土壌があったから「ネオニコ系農薬 人への影響は」を放送することができたし、多くの人に考えてもらうきっかけを作れたと思っています。放送後もYouTubeのアクセス数は増え続け、この3月上旬で再生回数は294万回に達しています。

農業の話抜きにSDGsは語れない

――映画は「持続可能な農業とは何か?」という、地味ですが、壮大なテーマです。

テレビのニュースでは農業の話が出てきたとしても、一部分を切り取った断片的なものばかり。69分という長尺の映画だからこそ伝わるものがあると思っています。

今、SDGs( 持続可能な開発目標)が世の中の一大テーマになっていますが、SDGsの観点から考えても、現在の日本の農業がサステナブル、持続可能なものであるかは極めて重要です。農薬によって生物多様性が損なわれている強い疑いがあるだけでなく、土地の耕作など農業由来の温室効果ガス排出量は、国連のIPCC「気候変動に関する政府間パネル」の報告書によると、世界全体の23%を占めています。

SDGsを本気で言うのならば、農業の話を抜きにはできないのです。

映画のキーワードは「循環」です。ネオニコは、自然界の循環を断ち切っている懸念がありますが、“優れた殺虫剤”だからこそ農作業の効率化や農家の負担軽減に寄与してきたのも事実です。

どうすれば循環を妨げない農業、サステナブルな農法を確立できるのか。映画では、そうしたことを皆さんと一緒に考え、循環のイメージを描いてもらいたいです。

絶滅から甦った新潟県佐渡のトキ。背景にはネオニコ系農薬をめぐる紆余曲折も(写真:川上監督提供)

――映画の後半では、有機農業に挑戦する人々を捉えています。理念はわかるのですが、有機農業で生産された野菜やコメはどうしても値段設定が高くなり、消費者が購入するにはハードルがあります。

物価が高い、電気代が高いという悲鳴が上がっている時に、食べ物まで高いものは買えないという消費者心理は、我が家のケースと照らし合わせてもよくわかります。

でも、なぜ高い値段がつくのか、という生産プロセスを知り、理解し、共感できれば、高い値段でも購入しようと考える消費者は少なくないはずです。消費者がそうした価値を知るきっかけを、私たちマスコミは作ってきたでしょうか。

「高いけど買おう」と考える消費者が増えるか否かは、そうした「価値」が世の中にどれだけ広がるかにかかっています。映画『サステナ・ファーム  トキと1%』を制作したのも、日本の農業の実態を広く知ってもらい、考えるきっかけになってほしいからです。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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