人への影響が疑われる「ネオニコ系農薬」に迫る 映画「サステナ・ファーム」が斬った日本の農業
――映画では、農薬「ネオニコチノイド」に焦点を当てています。蜂の行動に異変が起きたり、島根県の宍道湖からウナギやワカサギが大きく減ったりと、自然界の異変の原因がネオニコ系農薬なのではないかという観点で取材を進めています。ネオニコ系農薬に焦点を当てた理由は何でしょう。
日本で最も多く使われている殺虫剤(製剤ベース)だからです。1992年に初めて農林水産省に製造や販売、使用を許可する農薬に登録されて以降、使用量は急増し、現在は毎年約1万8000トンが出荷されています。
ネオニコ系農薬は7種類ありますが、その多くは日本の農薬メーカーが開発したものです。EUなどでは途中で見直されて規制が強化されたり、禁止されたりしたものもありますが、日本では7種類とも使われ続けています。
日本の専門家も論文などでさまざまな懸念を示しているのに、なぜ使われ続けているのか、このままでいいのかと、映像取材で検証してみたいと考えました。
EUで規制された農薬が日本では使われ続ける
――農薬メーカーらでつくる農薬工業会は自然界の異変とネオニコ系農薬使用との相関関係を否定していますし、国も農薬工業会と歩調を合わせています。これについて思うところは?
ネオニコ系農薬の安全性について農林水産省は「農薬メーカーから提出された試験成績に基づき、科学的に安全が確保されている農薬だけを登録してきた」と、使用方法を誤らなければ問題はないとしています。
一方で、2021年からはネオニコを含む登録済農薬の「再評価」を始めました。一度はOKと承認した農薬を、最新の知見を踏まえて検証し、規制や禁止を含めて検討していく初めての試みです。この再評価のプロセスにおいては、懸念を示している科学者たちや農業従事者、そして私たち消費者も納得できるよう、公開性や透明性をもって議論を進めてほしいと思います。
――再評価が始まっているとはいえ、政府や企業と見解が異なる映画を制作するのは、それなりの覚悟とエネルギーが要ると思います。
国や企業に忖度して穏便に済ませる姿勢では、シャープな番組は作れませんし、多くの人に刺さる問題提起はできないと思います。
私はTBS入社当初から「報道特集」でのドキュメンタリーづくりに憧れていました。念願叶ってこの番組に携われるようになったのは2008年からの約4年半と、2021年から現在に至るまでの、合わせて6年ほどになります。「報道特集」の制作現場はとても自由な雰囲気で、番組の幹部は基本的にそれぞれのディレクターの思いを大切にしてくれていますし、常々「忖度はするなよ」と言ってくれます。
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