植田「日銀次期総裁」が戦う相手は投機筋ではない 日銀が「倒すべき本当の敵」は一体何なのか?

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メディアも市場関係者も、市場というものを過大評価している。市場は偉くもないし、正しくもない。「ただの投資家とトレーダーの欲望の顕在化」にすぎない。

それなのに、今や市場が最上位にあり、日銀は市場と適切にコミュニケーションしないといけない。市場の事前予想と違う動きを黒田東彦総裁が行ったら、黒田氏は謝罪し、「なぜ市場から外れたのか」まで説明しないといけない。そして、次からは二度とこのようなことがないように、市場ときちんとコミュニケーションをとらなければならない。

「植田次期総裁も市場とのコミュニケーションを適切にしなければならない。それが『植田新日銀』において最も重要なことだ」。市場関係者はこのようにしたり顔で言い、メディアもただそれを鵜のみにして、そのまま垂れ流す。だが、これらは欲望の垂れ流しにすぎない。欲望という市場の排泄物にすぎない。

中央銀行の役割とは?

金融市場とは何か。リスクと時間(現在と未来の関係)に関して、価格をつけるところだ。それが金利である。リスク資産の利回りである。

その金利という金融市場における唯一、最重要の価格、それを適切な水準に誘導するのが、日本銀行、中央銀行の役割である。金利は金融市場のすべてであり、金融市場が実体経済に影響を与える唯一の道である。

それを適切な水準に誘導し、その水準で安定させる。その安定した見通しの金利の下で、実体経済において経済主体たちはそれぞれの経済活動に励む。そのとき、金利およびその将来変動、それに影響するインフレ率、将来のインフレ見通し、これらの要素を意識せずに、実体経済の自分の活動に集中できる状況。それこそが中央銀行が目指すべき経済状況なのだ。

こうした中央銀行の行動に、市場にうごめくトレーダー、投資家たちが絡みついてくる。その中には、適切な金利水準に誘導する行動をとる主体もいれば、それを混乱させることで利益を得ようと行動する主体もいる。もちろん、前者が社会に有益で、後者は害悪だ。

中央銀行が経済全体や金融市場全体を観察、分析し、適切であると考える行動をとれば、社会に有益な「正しい」行動をとっている投資家やトレーダーは中央銀行と同じ動きをするはずだ。

そして、彼らはもともと自己利益のために妥当な行動をとり、それが市場に歪みのない状況では、市場全体、経済全体の正しい動きと整合的な行動になる、というのが経済理論の教えるところである。

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