相鉄・東急直通で注目「新横浜」開発遅かった事情 開業後も長年「田んぼの中の新幹線駅」だった

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ワールドカップの開催翌年から、横浜市とJR東海は共同で新横浜駅・北口周辺地区総合再整備事業に着手した。同事業では立体都市計画制度を活用し、駅前に直径50mの円形ペデストリアンデッキを設置するなど街区の動線なども整備された。こうした駅および周辺が改良されたことで新横浜駅の北口は横浜の新たな玄関と認識されるようになった。

新横浜駅北口
新横浜駅北口は円形ペデストリアンデッキにより、歩行者・自動車の動線が確保されている(筆者撮影)

それらと前後して、国・神奈川県・横浜市などが構想していた神奈川東部方面線も2000年頃から動き始めていた。神奈川東部方面線のうち、相鉄・JR直通線は2019年11月に開業。このほど開業する相鉄・東急直通線が相鉄・JR直通線と大きく異なる点は、新幹線停車駅となる新横浜駅へ乗り入れる点だろう。

田んぼの中の新幹線駅と揶揄された開業時から、大きく様変わりした新横浜駅は、いまや東京駅や名古屋駅、新大阪駅と並び日本を代表する新幹線駅の1つと言っても過言ではない。それだけに、東急・相鉄が新横浜駅という新幹線停車駅とつながることを望むことは自然な成り行きといえる。相鉄・東急の新横浜線開業により、これまで東京からの来街者を期待するだけだったが、今後は名古屋・大阪などからの来街者が期待できる。

「篠原口」の開発はどうなる?

相鉄・東急新横浜線の開業により、神奈川東部方面線は完成を見る。これは、新横浜駅の総決算といえるかもしれない。しかし、それは鉄道インフラという観点でしかない。駅は、単に鉄道の乗降機能を果たしているだけではない。都市機能全般を担っている。鉄道路線の整備完了後も、駅内外でまちづくりが進められていく。それらの取り組みによって、駅は多くの人に欠かせない都市インフラになっていく。

新横浜駅は歳月とともに北口が開発されていったが、駅南側の篠原口は手付かずのままになっていた。今後は、篠原口側の開発が課題になるだろう。

新横浜駅篠原口
新横浜駅の篠原口は東海道新幹線の全列車が停車するとは思えないほどこぢんまりとしている(筆者撮影)

これまで篠原口が手付かずだったのは、地権者との交渉が進んでいなかったことが理由にあるが、そもそも篠原口の土地区画整理事業の計画決定は1994年と遅かった。新幹線の運行開始から30年以上も後という遅すぎる事業計画の策定・決定には、地権者・周辺住民・企業などが翻弄された。それが不信感として蓄積し、ようやく事業計画が決まった後も一悶着が起きた。それが尾を引き、2013年に事業計画はリセットされている。

新横浜駅篠原口ロータリー
篠原口の駅前広場はロータリーが整備されているものの、北口との差は歴然としている(筆者撮影)

篠原口側の事業計画は、こうした経緯から練り直しを迫られた。新横浜駅は新幹線の全列車が停車する駅に成長しながらも、いまだ篠原口側に住宅地然とした風景が広がっているのはそのためだ。

相鉄・東急新横浜線の開業で、新横浜駅のアクセスはさらに向上する。これを起爆剤として、未完だった駅周辺の開発が進むことが期待されている。

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小川 裕夫 フリーランスライター

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おがわ ひろお / Hiroo Ogawa

1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

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