「わかりました。こちらも暇ではないので、もう連絡を取り合うのは辞めましょう。つきましては、これまであなたに使ってきたお金の半額をお支払いください」
自営業者だった彼は、デート代や食事代を払う時に領収書をもらっていたようだ。その領収書をスクショした画像と一緒に合計金額が出され、その半額を請求する請求書と振込先が送られてきた。
「やっぱり別れて正解だった」
あきれたやよいは、その場でネットバンキングから半額を振り込んだ。ハイスペックな自分を振る女性が許せなかったのだろうが、「これまで出してきたお金を半分返せ」と悔しまぎれに言ってくるのは、いかがなものか。
「デート代は男性が払って」の訳
「デート代を男性に支払ってほしい」と思っている女性は、得ている収入が少なかったり、仕事が安定していなかったり(今は稼いでいても将来的にどうなるかわからない)、派遣やパートなどでいつ職を失うかわからなかったりするなど、女性の経済事情が大きく関わっている気がする。
また、若さや容姿に自信があって、デートをすればデート代を全額支払ってくれるような男性が周りに大勢いる、いわゆるモテる部類の女性だろう。デート代を全額出してくれる男性、割り勘にする男性を同一線上に並べれば、出してくれる男性のほうに男気や優しさを感じ、そちらに軍配を挙げるのは、至極当然の話だ。
ただ結婚相談所内の話をするなら、「男性がデート代を払って当然」と思っている女性は、逆に男性から結婚相手に選ばれていない。
以前、こんなことがあった。
のぶや(42歳、仮名)は、さとみ(35歳、仮名)、しおり(37歳、仮名)、としこ(40歳、仮名)と仮交際をしていた。
結婚相談所の交際には、仮交際、真剣交際の区分がある。
仮交際は、お互いの人柄を知る期間なので、何人と仮交際をしてもいいし、新しいお見合いをしてもいい。その中で、“この人となら結婚が考えられる”という相手が出てきたら、真剣交際へと進む。そこからは1対1で向き合うので、複数と交際していた場合には、他者には交際終了を入れる。また新しいお見合いもできなくなる。
さとみは、お見合いの時から一度も財布を開いたことがなく、食事が終わると「ごちそうさまでした」と、笑顔でお礼を言うだけだった。しおりは「食事をごちそうになったので、この後のお茶代は私が出します」と言ってきた。としこは、食事が終わると値段の半額ぐらいのお金を、「取ってください」と言って、毎回手渡してきた。
お見合い写真で見ると、さとみは可愛いタイプ、しおりは美人タイプ、としこはごく普通の容姿で地味なタイプだった。写真だけ見るなら、ほとんどの男性がさとみやしおりを選ぶだろう。しかし、のぶやが結婚相手に選んだのは、としこだった。
としこは、デートの前に自分の分の支払いができるように、毎回1万円札を千円札10枚に両替してお財布に入れていたようだ。
また、のぶやが残業続きで体調を崩したことがあった。その後のデートでのぶやの体調を気にしてくれたのは、としこだけだった。他の2人は、いつものごとく食事デートを終え、その会計をのぶやが支払うと、「ごちそうさまでした」と笑顔で言って、帰って行った。
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