しかし、企業などのスポンサーが付かないとプロジェクトの実施は難しい。しかも、東さんはじめスタッフは全員、忙しい日常や本業の合間に自分たちのスキルや人脈を使うプロボノ(ラテン語「pro bono publico」の略)として活動している。
継続的な活動はなかなか難しいが、今回は東京2020オリンピックパラリンピックのレガシーとして、障害の有無にかかわらず活躍できるエンターテインメントを根付かせたいと考えて、プロジェクトに取り組んだ。公演後は記録に残すためのスポンサーを探している。
「まぜこぜの社会」を作っていくには
「Get in touchの活動理念である『まぜこぜの社会』を作っていくためには、大きな影響力があるエンターテインメントが必要です。そして、観てくださった方に『身近な学校や職場に、いろいろな特性や障害のある人がいないのはどうしてだろう』と、モヤモヤしてほしいと思っています」と東さんは話す。
だが、 多様性や個性のある人々をプロジェクトのゴールに導くことは、管理されたコミュニティーとは異なり、なかなか難しい。
それぞれの人の置かれている状況や考え方、価値観などが大きく違うこともあり、傷ついたり傷つけられたりしやすいからだ。そのために、どうしてもコミュニケーション量が多くなり疲弊する。東さんも、「ものすごく大変です」と強調する。
「まぜこぜの社会では、物事を進めていくうえで、一筋縄ではいかないことが多いです。そのたびに『何が要因だったんだろう』と考えて、次へつなげていく、そんな連続です。でも、そこがおもしろいですね。自分も周囲も組織もアップデートしていくからです」
アップデートするとは、どういうことか。東さんは話を続ける。
「いろいろな人の価値観を受け止めることで、人生の選択肢が増えます。自分が生きていくための術(すべ)の扉がたくさんできると、色も形も大きさも違う扉を自分で選べるようになります。選択肢が増えることは迷うことでもあるのですが、人生はそのほうが楽しくなります」
また、東さんは今回、こんな経験もした。
こびとーずがいる舞台で東さんだけ背が高いという場面があり、東さんがマイノリティーになった。「まぜこぜ社会では、マイノリティーとマジョリティーの間を行ったり来たりすることがあります。そのとき、『結局、みんなマジョリティーで、みんなマイノリティーで同じだね』と気づきました」。
東さんは30年間のボランティア活動を通して、社会は大きく変わったという。近年、企業や官公庁のほうからGet in touchに問い合わせが来るようになったからだ。冒頭で紹介した渋谷区もその1つだった。
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「これまで企業は寄付をすることが主な支援でしたが、いまはどんな取り組みをしているかが問われています」と東さんは話す。
まぜこぜ社会は、眺めているだけでは実感できない。そのコミュニティに入り込み、お互いが関わりを持ち、もみくちゃになることで、そのよさや相乗効果を体験できる。それは、東さんの説明のように、私たちが変わっていくチャンスでもある。
![歌雪姫と七人のこびとーず](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/0/f/570/img_0f9e579dfa94a3108318a38fd8f61fcb50456.jpg)
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